7

8/20
前へ
/164ページ
次へ
 七時過ぎから飲み始めて、店を出たのは十時近かった。部長といろんな話ができて楽しかったし、料理もうまかった。でも、清文には遅くなるって伝えといたけど、怒ってねえかな。早く採用内定のメール見せてえな。  俺は神田のはずれの飲み屋から歩いて、人形町に帰ってきた。清文んちのすぐ近くのコンビニで少し買い物して、マンションのインターホンを押す。 「おかえり、寒かったでしょ」  スウェットにパーカーを羽織った清文が笑顔で迎えてくれる。幸せで、なんだか泣きそうになっちまった。 「ただいま、清文」  思わず、靴を脱いですぐ清文を抱きしめた。ガサガサッ、とコンビニの袋が音を立てる。清文のぬくもりが、寒い中歩いて帰ってきた身体に染みる。あったかくて、ますます泣きそうだ。 「どうしたの? 森部長との飲み、楽しかったんじゃないの?」  そっか、このテンション、酔ってるせいもあるか。でも俺は今、本当に幸せだ。清文に出会えてよかった。 「そりゃもちろん、楽しかったよ。だからこそ、さみしくなった」 「どういうこと?」  俺を抱きしめ返し、頭を撫でながら清文が言う。 「俺、会社辞めるから」 「えっ、なんで!?」
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

166人が本棚に入れています
本棚に追加