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七時過ぎから飲み始めて、店を出たのは十時近かった。部長といろんな話ができて楽しかったし、料理もうまかった。でも、清文には遅くなるって伝えといたけど、怒ってねえかな。早く採用内定のメール見せてえな。
俺は神田のはずれの飲み屋から歩いて、人形町に帰ってきた。清文んちのすぐ近くのコンビニで少し買い物して、マンションのインターホンを押す。
「おかえり、寒かったでしょ」
スウェットにパーカーを羽織った清文が笑顔で迎えてくれる。幸せで、なんだか泣きそうになっちまった。
「ただいま、清文」
思わず、靴を脱いですぐ清文を抱きしめた。ガサガサッ、とコンビニの袋が音を立てる。清文のぬくもりが、寒い中歩いて帰ってきた身体に染みる。あったかくて、ますます泣きそうだ。
「どうしたの? 森部長との飲み、楽しかったんじゃないの?」
そっか、このテンション、酔ってるせいもあるか。でも俺は今、本当に幸せだ。清文に出会えてよかった。
「そりゃもちろん、楽しかったよ。だからこそ、さみしくなった」
「どういうこと?」
俺を抱きしめ返し、頭を撫でながら清文が言う。
「俺、会社辞めるから」
「えっ、なんで!?」
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