166人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言ったきり、スマホを食い入るように見つめて、清文はフリーズしちまった。
「そういうわけで俺、鶴松に転職するわ」
俺が言った途端、フリーズしたままだった清文の顔が少しゆがみ、大きな瞳からほろりと涙がこぼれ落ちる。
「マジ……? マジなの、樹……?」
俺を見る清文の瞳から、次々にこぼれ落ちる涙。せつなげに揺れる声。
「うん、手の込んだ騙しとかじゃねえぞ?」
ボロボロ泣く清文が愛しくて、胸が苦しい。そっと、清文の頭に手を添える。
「こんな……。マジで、マジで転職とか……。しかも、俺より先に……」
うつむく清文の瞳からあふれる涙が止まらない。あごをしたたり落ちた涙が、スウェットのズボンに染みを作る。こんなリアクション、予想外だったから内心ちょっとあわてた。
「おいおい、そんなに泣くなよ」
涙を拭おうとすると、めちゃくちゃに抱きつかれた。
「うれしい、すっごいうれしい」
「バカ、痛えよ」
最初のコメントを投稿しよう!