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だが。
この巨人は、あまりにも大きすぎたのである。
狭い研究所の敷地に全てが埋まっていたはずもない。右手首、右肘、右肩――までを掘り起こしたところで、とある町にぶつかってしまったのである。そう、巨人は腕の先こそ自分達の研究所の敷地から見つかったものの、体の大部分は隣町の真下に埋まっていたのだ。
「世紀の大発見だ!こんなところで、立ち止まってたまるものか!」
ここで諦めたら国王陛下をがっかりさせてしまう。
何より、自分の名誉を称えて貰えない。私は王様に頼み込んで、勅命を出してもらった。つまり、町の住人に退去命令を出させたのである。
町を壊してでも、巨人を掘り起こすことを決めたのだ。
「は、博士!やりすぎでは……!?」
巨大なショベルカーで丘を切り崩し、畑を潰し、マンションを、ビルを崩しで地面を掘り起こしていく。そんな私を見て、ギルバートがさすがに止めに入った。
「町の住人全ての退去がまだです!命令に逆らって残っている人達がまだ何人か残っています!彼らがいる間に掘削を強行したら、みんな瓦礫の下になって死んでしまうことに……!」
「そんなもの、退去命令に従わない連中が悪いだろう。私には関係ない」
「住んでいる町を、家を、なんの保障もなく追い出されるんですよ!?反発する人が出るのは当然ではありませんか!」
「ええい、黙れ黙れ黙れ!私の世紀の大発見を邪魔するな!邪魔するならお前もクビにするぞ、ギルバート!」
「カイル博士……!」
そうだ。こんなところで、諦めるわけにはいかない。私はギルバートを突き飛ばし、怒鳴りつけ、発掘作業を強行した。
長年の私の夢。魔法文明の謎を解き明かし、魔法兵器を国王に献上し。そして、研究者として歴史に刻まれる存在になる。その夢が今まさに、叶う瀬戸際まで来ているのだ。どうして今更、立ち止まるようなことができようか?
――そうだ、この発見をするために、名誉を得るために全て捨てて来たのだ!
ここで諦めたら全て無駄になる。
自分を見捨てていなくなった妻をぎゃふんと言わせてやることもできない。
「いやああああああああああああああああああああああああああああ!助けてえええええええええええええええええ!」
「壊さないで、おねが、おねがいっ!!」
「うわああああああああああああああああああああ!!」
「ぎゃああああああああああああ!痛い、痛い痛い痛い痛い痛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
爆破され、削られ、崩れていくビルの隙間から、聞こえる町の住人たちの悲鳴。それを私は笑いながら眺めた。さっさと町から出て行かないお前たちが悪いのだ、と。
「博士……」
そんな私を、泣きそうな顔で見つめるギルバート。
彼が辞表を出してきたのは、その翌日のことだった。
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