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今日は土曜日。金曜日は夜更かしする分、土曜日は思う存分寝て、起きたら湯船に入る。平日はシャワーで済ましちゃうけど、休日くらいはゆっくり湯船に浸かりたい。
「ふぅ。温まったー…」
頭にタオルを巻き、グレーのスウェットに着替える。二十代前半の女子って、もこもこのルームウェアとか着るのかな…。あー、やめやめ。誰に見せるわけでもないし、同じお金なら推しに貢いだ方が心も満たされるってもんよ。…こんな考えだから何年も彼氏できないのか。
冷凍庫からバニラアイスを取り出し、それを持ってベッドに寝転がる。そして枕元に投げてあったスマホを手繰り寄せ、アプリを起動させる。
『らむねはこれからダンスの練習だ!一緒に頑張ろ!』
そこでアイスを一口。
「くぅぅー…!」
ぽかぽかの体に冷たいアイス。そして大好きなゲーム。まさに休日の贅沢だ。
その時、玄関のチャイムが鳴った。なんか頼んだっけかな?
「はーい!」
ドアを開けるとそこには男の子の姿があった。
「初めまして。隣の部屋に引っ越してきた倉橋斗真です。よろしくお願いします。」
「え…」
思わず声が出た。だって…この子の顔、推しのらむねちゃんにそっくりすぎる!
「あの…?」
男の子が不思議そうな顔をしてる。
「あ…はい!こちらこそよろしくお願いします!」
扉を閉めてからも興奮が冷めない。そんな、あのスーパー美少女のらむねちゃんとそっくりな人が現実に存在するなんて…しかも男子!
あー…あの子はあんなに可愛らしいお顔で今までどうやって生きてきたんだろ。そんな子が隣の部屋に引っ越してくるなんて、愛ゆえの奇跡か。
「髪型とかをいじれば完璧なのにな…」
…それだ!あの子にらむねちゃんのコスプレをしてもらえば、リアルらむねちゃんが誕生するのでは?
らむねちゃんのコスプレセットは一式揃っている。あの子は線が細いみたいだったし、身長もそれほど高くないからきっと着られるだろう。
「あの子と仲良くなってコスプレしてもらう。私の手でらむねちゃんを現実世界に生み出すんだ…!」
興奮状態だった私はそう決意した。
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