30人が本棚に入れています
本棚に追加
まずいまずい。これは最悪のパターンに突入したかもしれない。具合悪そうだったし、意識が朦朧としてて私が家にあげたこと覚えてないのか。うまく説明しないと、やっぱり警察……?って仲良くなるどころか埋めがたい距離作っちゃってるじゃん!
弁解、しないと……
「家の前に君がうずくまっていて、鍵忘れて入れないみたいだったから、うちにあげました! 別に拉致してうちの子にしてやろうとかそういった下心は一切ないので通報しないでくださいっ!」
言った勢いで頭を下げる。この沈黙怖いなぁ……
恐る恐る頭を上げると彼は呆気にとられたような顔をしていた。
「えーっと……僕、今日大学の飲み会に連れていかれて、お酒は飲んでないんですけど、その、人の多さで具合悪くなっちゃって。何とか抜けてアパートに帰ってきたんですけど、鍵がないことに気づいて……家には入れないし気持ち悪いしでどうしようもなかった僕を、隣の部屋の人が助けてくれたんです……」
うん、そこまでは合ってる。それなのに、どうして「ここはどこ」になるんだ?
「助けてくれたのは男の人だったと思うんですけど……失礼ですけど、女の人、ですよね?」
本当に失礼だな。
「私は正真正銘の女です!……まあ、女っ気ないとはよく言われるけどね。はは……」
ぐぅっ……自分で言っておいて胸が締め付けられる。
「ああ! すいません……あなたが女の人か疑った訳じゃないんですけど、その、僕のアパートは女性禁制だって聞いていて……」
はい? いや、そんな話聞いたこともないし、そもそも私住んでますし。
「このアパートは女性禁制じゃないよ。その話、誰から聞いたの?」
「あの、母が……」
あー、なるほどね。1人暮らしを始める息子に悪い虫がつかないように呪文をかけたのね。今まで信じ込んでたこの子もすごいけど。
最初のコメントを投稿しよう!