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 自分のことはよく知られていない。これもチャンスと捉えた。少なくとも自分は、他のメンバーの特徴を覚えていると自負している。たとえ沙也加でも弱点はあるのだ。無敵ではない。つけ入るスキはあると考えている。  それでも勝ち残るには簡単なことではない。十四人と戦うのだ。  それには相手の研究が不可欠である。  相手の性格と繰り出す打突のパターンを理解すること、そして自分ができうる対抗策は何か、だ。  敵を知り、己を知るのだ。勝負の基本だと父から教えられている。  自分のスタイルを貫くよりも相手に合わせた攻略方法を見つけることが生き残る近道と菜々子は考えた。  相手がどんな性格か、どういう打突を繰り出してくるのかを理解し分析し、自分なりの攻略方法を確立させるのだ。  それができれば、レギュラーへの道はぐっと近づくはずだ。  とにかく、これが最後のチャンスだ。  十五人の中で一番になる必要はない。十五分の五でいいのだ。  菜々子の身体は、半年に及ぶ真剣の素振りによって、生徒会活動をしていたころとは全く違うものになっていた。しかしそれは、裸にでもならない限りわかるものではない。  菜々子は机に向かい、今では鋼のように鍛え上げられた腕を組み、女子部員十四人の顔を、そして稽古の様子を思い浮かべた。
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