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二
「春姫ぃ、どうする?」
暮れかかった帰り道、小田原理奈は、須藤春姫と並んで歩いていた。二人とも足取りは重い。
二人にとって部活が再開されることは、あまりうれしい事ではなかった。
部活動の休止期間、何をしたかといえば、特にしていなかった。
練習がなくなり、好きに使える時間が増え、部活のない生活もそれなりに楽しいということを知ってしまったのだ。
「どうするって?」
「試合よ。自信ある?」
「無理無理。だって、休部している間、何にもしてなかったんだよ、勝てるわけないじゃん」春姫は即答した。
「だよね」理奈は安堵の顔をした。
「またあの汗臭い道着を切ると思うと憂鬱だねえ、いっそ辞めちゃえばよかったかなあって思っちゃうよ」
「何言ってるのよ、北新の剣道部員だったってことで大学の推薦、もらえるところもあるんだからね。利用できるものは利用しないと」
「そっか。選手でなくても部活頑張ってましたって言えるもんね」
「そゆこと」
「試合もね、そんなに悲観することはないかもよ」
「え、どゆこと?」
「沙也加と加奈には勝てないでしょうけど、菜々子だってたぶん何もしていない。生徒会活動が忙しかったからね」
「なるほど」
「あとは下級生だけど」
「ここに来る前だから、練習してたよね、あのこたち一年生は」
「まあそうだろうけど、たぶんだ丈夫だよ」
「なにその自信。どこからくるのよ」
「上級生の強み、かな」
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