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 菜々子は、三年生の性格と得意技を思いつくまま書き出していたのだ。  監督からの選手選考についての言葉を聞き、何をすべきかとあれこれ考えた末のことである。  あらためて他の部員の性格や技を分析し、傾向と対策を考えるつもりなのだ。  幸か不幸か、部活が活動停止になっていた間、努力していた者とそうでない者とがふるいにかけられることになった。  総当り戦では実力の差がはっきりと出るだろう。素質やカンのよさだけでは残れないと思っている。誰がそれだけのことをしていたのか。そこがカギだ。  活動停止の期間中、沙也加はやはりどこかで練習をしていたに違いない。着替えの時にちらっと目にしたあの身体。ひと回り大きくなっていた。無駄についた肉ではなく、身体を引き絞って膨らませた、そんな感じだった。剣道以外のことをやっていたかもしれない。  さすがだ。沙也加は別格だ。感心せざるを得ない。  問題は他の連中である。  ざっと見たところ、監督の話を聞いて動じていなかった者は沙也加と加奈、それと二年生の谷川早霧。自信がありそうなのは三人だけと判断した。  この三人の中の一人をやっつけたらわたしにもチャンスはある。その自信はある。  この半年間、ひそかに練習してきたことが自信にもなっている。父に感謝だ。  最後のチャンス。今回は生徒会のことは二の次とする。悔いは残したくない。  菜々子は腕を組んで黙想した。 
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