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 菜々子は生徒会副会長であり、剣道部員である。  中学三年生のときに県大会団体戦で優勝した。相手は沙也加のいる中学である。  沙也加と対戦したわけではないが、あのときは、沙也加と当たったとしても、負ける気はしなかった。団体戦決勝は二勝一敗二引き分けで勝利した。二勝のうち一勝は菜々子があげたものだ。  沙也加と同じ高校に入学するとは思わなかった。でもこれでインターハイ出場も夢ではないと昂奮し剣道部に入部した。が、親からは文武両道を強いられた。  そのため、一年生のころこそ塾と剣道部活動に励んだが、二年生の秋、生徒会副会長に軽い気持ちで立候補したら当選してしまった。それ以降、剣道の稽古には遅れて参加することが常となり、稽古を早く切り上げざるを得ないことも一度や二度ではなくなった。  なので、菜々子はこれまで大会に出たことはない。  このまま選手として出場することなく剣道部員を終えるしかないのかと半ば諦めていた時、剣道部が活動停止になった。  菜々子は親に提案した。部活ができない間は生徒会に力を注ぐから、部活が再開したら剣道に重点を置きたいと。  菜々子の願いはかなった。  剣道部が活動停止期間中、菜々子は生徒会の活動に注力した。  四月、奈々子は「最後だから剣道を優先したい」と生徒会執行部に申し入れた。皆は応援してくれることになった。    部活動が停止されたとき、父が言った。 「よく言った。おまえは生徒会が忙しくて部活動が十分できないと嘆いていたが、今度は部活をしなくてよくなったのだぞ。ということは、四月には剣道部員全員が同じラインに立つということだ。それはつまり、部活が再開されたとき、できなかった期間に頑張った者が優位に立てる、その期間にどれだけがんばれたかが、活動再開から先の道を開くことができるか否かの鍵になるのだよ」
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