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第四章 皐月
一
あっという間に日々は過ぎ去り、選手選考のための部員総当たり戦の日を迎えた。
校庭の桜はすっかり散り落ち、次代のために青々とした葉を茂らせている。
試合開始に先立ち、小松田監督がルールを説明した。
「試合は三本勝負。時間は二分。勝負がつかないときは一回だけ延長戦を行う。これも二分だ。それでも勝敗が決しなければ引き分けとする。試合の成績は点数化して順位をつける」
「二分は短くないですか」
小松田はさもありなんという顔をして頷いた。
「全部で何試合するか計算した者は」
部員たちは無言だった。
「女子は全部で十五人だな。百五試合だ」
「げ」
「そんなに」
「男子は十六人。全部で百二十試合になる」
ため息が漏れた。
「平日を含めた連休の一週間でこれを消火するとなると、女子の場合はだな、一日十五試合は消化しないといけないのだよ。男子はそれ以上だ」
「げ」
「試合時間が三分だと、それだけで四十五分以上かかるってことだよね」
「そうだ。そして、一日ひとり一回試合すればいいというわけにもいかなくなるということだ」
どこからともなくため息が漏れた。
「試合時間が二分という理由が分かったか」
男子も女子も皆無言で頷いた。
小松田は続けた。
「短い時間の中で駆け引きを行い、勝負をかける勉強にもなるはずだ。一二年生は、この先につながる練習と思いがんばってほしい」
「順位の決定は、勝ち点数の多い者から上位とする。引き分けはカウントしない。もちろん男子女子同じ条件だ。選ばれるのは補欠を含め六人」
部員たちはじっと監督を見つめている。
「質問はあるか」
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