第四章 皐月

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「勝ち星が同数の場合はどうするんですか」  男子から声が上がった。 「勝ち数が同じ場合は、負けの少ないほうを優先する。それでも同じ場合は、同じ成績の者同士で再度試合をしてもらう」  はい、と声が道場に響いた。  監督の説明が終わると、部員は男子と女子に分かれて選考会の準備に入った。  審判は部員が持ち回りで行い、監督は全体を見ている。 「さ、がんばろうね」  加奈から話しかけられた沙也加は「負けないからね」と応えた。  そのあと沙也加は目を閉じ、精神を集中させた。 「第一試合は、一年生、谷川かすみ選手、同じく一年生、大垣歌恋選手」  呼び出された二人が「はい」と返事をし、前に出た。  いよいよ始まるのだ。沙也加は、程よい緊張感に包まれながら試合場に視線を向けた。
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