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 二人目の相手同学年の青井柚葉には、足さばきで翻弄した。柚葉は防御に回らざるを得ず、早霧は一本勝ちした。  これまでの早霧は、同学年の土井真理愛、一年生の仙北谷みなみを破っている。通算負けなしの四勝一引き分けである。 「お姉ちゃん、やった」  妹のかすみが手を叩いてはしゃいでいた。  姉妹と二人でたてた作戦が見事に的中したのだった。  とにかく相手に攻めさせないこと、一本勝でも勝ちは勝ちというのが二人が導き出した結論であった。  早霧は決死の覚悟で試合に臨んでいた。見ている者にも殺気が伝わってくるほどであった。 「なんか、すごいんだよね、あの気迫」戦った相手が口をそろえていった。  早霧の妹かすみも、三年生の須藤春姫に延長戦の末勝った。  かすみはこれで三勝二引き分けである。「なんなのあの子」  小田原里奈が悔しげに言うのが聞こえた。 「なにやってるのよ、春姫」  清水加奈も眉根を寄せている。 「わかんないよ、わけわかんないうちに負けちゃったよ。ああもう、こんなんだったら、練習しとくんだった」  三年生が色めき立つ中、かすみも選手候補に名乗りを上げた。 「谷川シスターズ、ヤバいよ」  清水加奈が、引き上げてくるかすみをじっと見つめていた。 「やっぱり、要注意だよね」  木場沙也加も加奈の隣でつぶやいた。  しかし二人にはどこか余裕があった。 「でもまだ半分だし」 「これからが勝負だよね」  沙也加はここまで負けなしの六連勝、加奈もそれに次いで五勝一引き分けの成績であった。
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