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 総当たり戦の日程も半分を終え。戦いは後半戦に入った。  須藤春姫と小田原理奈は、矢島聖羅に対して、まるで仇を討つかのような勢いで向かっていった。  理奈は特に、一年生のかすみに負けたこともあってか、闘志むき出しだった。  聖羅は圧倒され、小須藤春姫と田原理奈とに敗北した。 「なにが『わたしが勝っちゃっても』だ、ふん、思い知ったか」  鼻息荒く腕を組み、聖羅を見下ろした理奈と春姫の二人だったが、対戦成績は芳しくなく、この時点での彼女たちの勝ち星は、春姫が三勝、理奈が二勝であった。  谷川早霧は、いよいよ明日沙也加と戦うことになった。  谷川姉妹は、練習を終え家に帰ってからも、今後の対戦相手に対する研究に余念がなかった。  父の骨折は、退院してリハビリ通院でよいほどに回復したが、内科的な病もあるとかで、まだ入院している。詳細は検査の結果が出ないとわからない。 「沙也加先輩は隙がないようで隙はある。微妙だけど、打ち込もうとするときに予兆があるんだよね、それは目の動き」  先に沙也加と戦った谷川かすみが姉に話す。かすみは沙也加に運良く勝てた。早霧のために時間いっぱいを使い、沙也加の観察をするつもりだったが、なんとなく沙也加の動きが分かったという。 「一瞬だけど、打とうとするところから、あえて目を逸らす癖があるよ」 「それはどういうこと?」  沙也加はかすみの手元に視線を送っていたが、ふいに面を打ち込んできたという。  それならとかすみは、沙也加の視線を見ながら、沙也加が見ていないところを打ってくるものと予測したのだ。 「自分が狙っているところを意識していると相手が気付いてしまうと警戒してかな」 「たぶん」 「あえて目を逸らすってことだね」 「うん」 「わかった。ありがと。それでね、かすみが明日戦う菜々子先輩には、打突の際に出る癖があるよ」
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