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 菜々子は早霧が偵察を頼んでいた三年生だ。生徒会副会長も務めている才女でもある。生徒会活動をしていなかったら、木場沙也加、清水加奈に次ぐ実力者だったろうと言われている。 「どんな癖?」  かすみは菜々子の偵察をしていたが、これといった欠点弱点を見出すことはできなかった。 「出ようとするときは、一瞬竹刀を下げるんだよ」 「どうしたら勝てるかな」 「あのね、まずは誘って向こうから先に打たせるように仕向けるんだ」 「どうやって」 「それはね・・・」  しかし、早霧は沙也加に勝つことはできなかった。  早霧は「沙也加先輩は、目は口ほどにものを言うの裏を突くのだ」とかすみからアドバイスを受けていながら勝てなかった。  沙也加の視線は、打突部位のどこをも見ていなかったのである。というか、かすみには、沙也加がどこを見ているのかわからなかったのだ。だから早霧は、沙也加の視線の裏をかくという作戦を実行できなかったのだ。  もっとも、立ち会った際には圧倒されるほどの眼力を意識せずにはいられなかった。こちらの視線が吸いつけられるのだ。吞み込まれそうになり、気力を振りそこから逃れようとしたときには、沙也加は動いていた。  沙也加の動きを認識したときにはすでに遅く、その打突を受ける、かわすことで精一杯だった。あっという間に畳み込まれてしまった。  結局早霧は、心が定まらないうちに打ち込まれ、防戦一方の展開となり負けてしまったのだ。  なまじ事前に情報を仕入れていたことでそのことにとらわれてしまい、自分の剣道ができなかったことが敗因となった。  その流れを引いてしまったのか、早霧は同学年の青井柚葉にも敗れた。  かすみも菜々子に敗れた。
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