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 解散後、清水加奈が沙也加に言った。 「沙也加あ、あんたはどうしてそんなに強いのよ。わたしらなんか、全然かなわなかったじゃないか。どこでどんな練習してたのさ」  沙也加は全員との対戦成績十四試合中十二勝。最終決定戦は六試合中五勝。堂々の一位通過であった。 「そんなことない。自分は弱いと思うから練習するだけだよ」 「またまた。沙也加が弱かったら私らどうなるのよ、どんな練習してたのよ。その身体もそうだしさあ、部活がなかった間、誰とも連絡とらなかったでしょうよ」  何やってたのよと加奈は沙也加を問い詰めた。 「ある意味敵だからね」  それはそうだけどさあと加奈は口を尖らせる。  教えてくれてもいいじゃんかと加奈が駄々をこねていると、二人の周囲に皆が集まってきた。 「もういいじゃん、選手も決まったことだし、教えてよ」  本当は言いたくなかったが、結果は出たし、皆と連帯感を持ちたかったこともあり、沙也加は言った。 「警察の道場に行ってた」 「例のあそこ?」 「違う。もっと遠いところ。部活が停止中だったから、見つかると面倒臭いから。お父さんが手配してくれたの」 「げ、ひとりで警察道場に行ったってこと?」  沙也加は「ん」と頷く。 「そんなことするんだ」 「勝てるわけない」と下級生たちの声が上がった。 「やっぱりね」三年生はさもありなんという顔をしている。 「お父さんに連れられて行ったんだけど、うん、わたしもひとりじゃあたいへんかもなあって思ってた。でも、同じことしてる人たちがいて、その人たちとも稽古してた」 「お父さんの知り合いってこと?」加奈が訊いた。
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