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「違うよ、全然違う」即顔を小きざみに横に振って否定した。父は世話はするが、自分が稽古をつけるようなことは、余程のことがないとやらない。
「あ、お父さん、たしか剣道するんだよね」と春姫が思い出したように言った。
去年の市民大会に出ていたのにもう忘れられたのか。覚えていてくれなかったのかと腹が立った。だが顔には出さない。
「ああ、沙也加のお父さんでしょう、市民大会に出てたよね、たしか」
そうそう、知ってんじゃん。さすが菜々子と沙也加は頷く。少し機嫌を取り戻した。
「じゃあさあ、沙也加はお父さんの仲間の人たちと稽古してたの?」
ううんと沙也加は首を横に振った。
「警察の道場じゃあ、警察官でしょう」菜々子が言った。
ああ、そうだよねと加奈は納得したような返事をした。「ビシビシバシバシ鍛えられたんだ。納得した。さすがだ、沙也加は」
「厳しくなかったですか」一年生が言った。
「警察官の笹渕ってひとは強かったよ。ぜんっぜん相手にならなかった。県警の代表にもなってる人だって」
「げ」
「そ、その方と、ま、マンツーマン、ですか」
早霧が目を輝かせている。
沙也加は首を横に振った。
「まさかあ、だから、稽古に来ていたのは、わたしだけじゃないって言ったじゃん。あ、あと、寺内先輩のお姉さんが来てくれた」
「げ」加奈が一歩引いた。
「寺内飛鳥があ?」春姫が目を輝かせた。
「なんでよ」加奈がよろめいた。
「呼び捨てはまずいっしょ」菜々子が春姫を見た。
「な、なんで飛鳥先輩がきたの?」加奈は沙也加の肩に手をかけて言った。
「わからないよ、そんなこと」
「ずるい、沙也加」
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