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 容姿端麗頭脳明晰な寺内飛鳥は、北新高校剣道部女子にとり、憧れの存在なのだ。 「今度機会があったら誘ってよね」 「わたしも」 「わたしもお願いしますっ」  周囲にいる女子部員のほとんどがさやかに羨望の眼差しを注いでいた。ここには惰性で部活動に参加しているものはいない。半年間の活動停止があったことも影響しているのだろう。  沙也加は困惑した。「たまたまだから。わたしは道場を使わせてもらいに行っただけだし」 「だから、誰と稽古していたのよ」加奈が問い詰める。 「え、だから、最初は父とやろうとしたんだよ」 「だからお父さんはやらないんでしょ」 「うん、笹渕さんが来たら帰った」 「なによそれ」 「自分を知っているのよ」  父は自分以上に娘を指導できる者がいたから引いたのだ。 「ふうん」 「じゃあ、笹渕先生と飛鳥先輩に稽古をつけてもらってたってこと?」 「それじゃあ強くなるよね」 「その身体にも納得するわ」  どうやら皆は、沙也加の筋骨逞しくなった身体は、笹渕や寺内飛鳥と稽古して成ったものと理解したらしい。このままとぼけようと沙也加は考えた。 「毎日毎日来るわけないじゃん。年度初めだよ。あの人たちだって、仕事があるっしょ」 「じゃあ、他にもいたってこと?」  うん、と沙也加は頷いた。  誰よ誰よと問う加奈に沙也加は「阿仁川工業の剣道部」答えた。 「げ、あの素行不良の」  阿仁川工業高校の剣道は「ケンカ剣道」という風評が立っている。 「あの人たち、噂ほどじゃないよ。だって、警察に練習に来るんだよ、それに、大人ばかりじゃなくて、同年代の人と稽古することも必要かと思ったし」
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