9人が本棚に入れています
本棚に追加
「わかるう、相手が先生だけじゃあ、気が張りっぱなしだものね」加奈が上目遣いで言った。
うん、と沙也加は頷く。
他の三年生がくすくす笑っているのに沙也加は「何かおかしい?」と首を傾げた。
「で、どうだったの」加奈はにやにやしている。
「結果は出たよ。レギュラー取れた」沙也加は真面目に答える。
「そうじゃなくって」
いいことなかったのかって、と加奈はひじで沙也加の脇腹をつついた。
「なに、どゆこと」
えーと天井を仰ぐ春姫と理奈。
「ホントに?」
「ないってば」
ふうん、と沙也加の顔を窺っていた加奈は「そっか」とひとりで納得していた。
「ないよ、なにも」
「わかったわかった」
「ホントだよ」
「親公認ってことだもんね。大会が終わったら、だね」
加奈は片頬を歪めた。
「なにそれ」
「そしたらわかる」
「どういう意味」
「わたし、これまで、伊達に男を追っかけてきたわけじゃないよ」
加奈は意味ありげににやりと微笑んだ。
「まあいいよ、大会頑張ろうね。さ、みんな、解散解散」
加奈は沙也加に背を向けたまま手を挙げ、振りながら去っていった。
「なによ」沙也加は心を見透かされた気がして面白くなかった。
最初のコメントを投稿しよう!