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「わかるう、相手が先生だけじゃあ、気が張りっぱなしだものね」加奈が上目遣いで言った。  うん、と沙也加は頷く。  他の三年生がくすくす笑っているのに沙也加は「何かおかしい?」と首を傾げた。 「で、どうだったの」加奈はにやにやしている。 「結果は出たよ。レギュラー取れた」沙也加は真面目に答える。 「そうじゃなくって」  いいことなかったのかって、と加奈はひじで沙也加の脇腹をつついた。 「なに、どゆこと」  えーと天井を仰ぐ春姫と理奈。 「ホントに?」 「ないってば」  ふうん、と沙也加の顔を窺っていた加奈は「そっか」とひとりで納得していた。 「ないよ、なにも」 「わかったわかった」 「ホントだよ」 「親公認ってことだもんね。大会が終わったら、だね」  加奈は片頬を歪めた。 「なにそれ」 「そしたらわかる」 「どういう意味」 「わたし、これまで、伊達に男を追っかけてきたわけじゃないよ」  加奈は意味ありげににやりと微笑んだ。 「まあいいよ、大会頑張ろうね。さ、みんな、解散解散」  加奈は沙也加に背を向けたまま手を挙げ、振りながら去っていった。 「なによ」沙也加は心を見透かされた気がして面白くなかった。
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