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五
選手選考会を終え、解散したとはいえ、谷川かすみは、全身脱力感に襲われていた。
汗がまだ身体じゅうから噴き出している。
先輩たちと戦うことがいかにプレッシャーであったのか、その影響が、今になってどっと身体に現れてきたようだった。
皆が沙也加主将のところに集まり何やら話をしているようだったが、立ち上がってそこまでたどり着ける自信がなかったので行かなかった。それほど疲弊していた。
やっとの思いで這うように壁際まで移動し、へたり込んだ。
沙也加先輩の目力、圧倒的な打突、加奈先輩が繰り出す連続打ちには、技を返そうとか、出鼻を抑えるとかの余裕はなかった。かわすのが精いっぱいで、とても反撃はできなかった。菜々子先輩に対しては攻められ攻められ後がなくなり、前に出るためやむを得ず打って出たところを見事に返された。
かろうじて柚葉先輩に勝つことができ、かすみは一勝をキープ、補欠の座を獲得した。柚葉先輩はかすみに敗北し、一勝もできずに戦いを終え、選考から脱落した。
中学時代はそれなりに成績を残し、スポーツ推薦枠で北新高校へ入学することができたかすみだが、レベルの違いをまざまざと見せつけられた選手選考会だった。
それでも何とか補欠になることができたのは、姉がいてくれたからだと思う、
まずは姉の早霧がレギュラーの座を射止めることができてよかった。本当によかった。
正座を崩した姿勢でなんとか体裁を保っているが、本音は床に横たわりたかった。しかしそれはあまりにみっともない。
まだ汗は引かない。
姉の早霧は監督に呼ばれてどこかに行ったきりで、まだ戻ってきていない。
かすみは深呼吸を繰り返した。
深呼吸に集中した。
「かすみ、強いね、すごいね。よく頑張った」と声を掛けられ顔を上げた。
いつのまにか目の前に加奈先輩がいた。
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