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「はあ。わたしたち、頑張らきゃならないんです」  ようやく呼吸が整ってきて安堵したせいか、思わず本音を言ってしまった。 「なんで」  問われてかすみは「あ、いえ」とはぐらかそうとしたが、加奈先輩の眼に捕らえられてしまい、逃げられなくなった。 「そうなんです」と間を取った。  どう言おうかと思考を巡らせていると、 「監督から差し入れでえす」  早霧と柚葉先輩、男子部員二人がペットボトルのスポーツ飲料を抱えて入ってきた。  部員たちはたちまち群がった。  おつかれさまです、と早霧がペットボトルをもって加奈先輩との間に割って入ってきた。 「ああ、早霧もお疲れ。強いね、あんたたち。三年生もかたなしだわ」ペットボトルを受け取りながら加奈先輩が言った。  いえ、たまたまですと早霧は言い、話しかけないでと言わんばかりに視線を逸らした。 「ああ、そっか、お父さん、入院してるんだよね、思い出した。だからかあ、がんばってるとこ、見せなきゃだもんね。うん、わかった」 「かすみ、立てる? 行くよ」早霧は加奈先輩を無視した。  かすみは早霧が差し延べた手を握った。身体を起こそうと力を込め、ぐいと引いた。 「でもね」加奈先輩が言った。 「話したくないなら、それはそれでいいけど、これから選手になったら、気持ちを一緒にして練習しなきゃならないんだよ、ひとりが心に壁をつくってしまったら、それだけでチームはまとまらないと思うんだ」  加奈先輩の声を背中で聞いたかすみは、唇をかみしめ眉根を寄せ、身を固くした。  早霧は「わかりました」とあっさり答えた。 「じゃあ、またね。大会がんばろ」  踵を返して去ってゆく加奈先輩の背中におつかれさまです、と姉妹は頭を下げた。 「余計なこと言わなくていいからね」  顔を上げたかすみの横で早霧がきつく言った。 「ね、ね、沙也加あ、阿仁川工業の松川って練習に来てたあ?」
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