9人が本棚に入れています
本棚に追加
第五章 皐月の二
一
高校総体地区大会を十日後に控え、オーダーが発表された。
先鋒;矢島聖羅(2年)
次鋒;磯村菜々子(3年)
中堅;谷川早霧(2年)
副将;清水加奈(3年)
大将;木場沙也加(3年)
補欠;谷川かすみ(1年)
である。
練習後、清水加奈と磯村菜々子、木場沙也加は、大会までの稽古をどうするか打ち合わせをするために残っていた。
選手に選ばれなかった須藤春姫と小田原里奈は早々に帰った。
「それにしても、菜々子が次鋒とはねぇ」
打ち合わせを終え、着替えている中で加奈が言った。
「うん、中堅だとばっかり思ってた」
沙也加も同意する。勝負所で力を発揮できると思っていたのだ。
菜々子は「どこのポジションだって、全力でやるっきゃないよ」と答える。
沙也加は二人から離れ、自分の身体を隠すようにして道着を脱いだ。今や沙也加の身体はちょっとしたボディビルダーになっている。
「ところでさあ」
「なに」
菜々子はちょうど道着を脱いだところだった。
「奈々子の腕、太いよねえ、そんなに太かったっけ」
「え」と奈々子は腕を隠すようにして加奈に背を受けた。
「肩幅もあるよねえ」張り出した肩と引き締まった腕が、華奢な身体には不釣り合いだよと加奈は言い、菜々子の肩をさすった。
「いやだあ、やめてよ、恥ずかしい」
菜々子が身体をくねらせる。
「凄い身体、だからあの返しができるんだね、納得したよ」
さわらせて、と加奈は菜々子の身体を撫でまわす。菜々子は「そんなことないよ」と言いながら、身体をよじって加奈から逃げる。
沙也加はそんな二人を横目で見ながら、関わろうとはしなかった。さっさと着替えてしまおうと道着を脱ぎ制服のブラウスを羽織り、手早く袴を脱いだ。
「ねえねえ、沙也加ぁ」
加奈がいつの間にかそばにいた。
「え、なに」
最初のコメントを投稿しよう!