第五章 皐月の二

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第五章 皐月の二

   一  高校総体地区大会を十日後に控え、オーダーが発表された。  先鋒;矢島聖羅(2年)  次鋒;磯村菜々子(3年)  中堅;谷川早霧(2年)  副将;清水加奈(3年)  大将;木場沙也加(3年)  補欠;谷川かすみ(1年)  である。    練習後、清水加奈と磯村菜々子、木場沙也加は、大会までの稽古をどうするか打ち合わせをするために残っていた。  選手に選ばれなかった須藤春姫と小田原里奈は早々に帰った。 「それにしても、菜々子が次鋒とはねぇ」  打ち合わせを終え、着替えている中で加奈が言った。 「うん、中堅だとばっかり思ってた」  沙也加も同意する。勝負所で力を発揮できると思っていたのだ。  菜々子は「どこのポジションだって、全力でやるっきゃないよ」と答える。  沙也加は二人から離れ、自分の身体を隠すようにして道着を脱いだ。今や沙也加の身体はちょっとしたボディビルダーになっている。 「ところでさあ」 「なに」  菜々子はちょうど道着を脱いだところだった。 「奈々子の腕、太いよねえ、そんなに太かったっけ」 「え」と奈々子は腕を隠すようにして加奈に背を受けた。 「肩幅もあるよねえ」張り出した肩と引き締まった腕が、華奢な身体には不釣り合いだよと加奈は言い、菜々子の肩をさすった。 「いやだあ、やめてよ、恥ずかしい」  菜々子が身体をくねらせる。 「凄い身体、だからあの返しができるんだね、納得したよ」  さわらせて、と加奈は菜々子の身体を撫でまわす。菜々子は「そんなことないよ」と言いながら、身体をよじって加奈から逃げる。  沙也加はそんな二人を横目で見ながら、関わろうとはしなかった。さっさと着替えてしまおうと道着を脱ぎ制服のブラウスを羽織り、手早く袴を脱いだ。 「ねえねえ、沙也加ぁ」  加奈がいつの間にかそばにいた。 「え、なに」
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