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第五話
星空の下、お母さんの口数が突然多くなった。
どうしようもない焦燥に駆られたのだろうか、何かに急かされるように言葉が溢れ出す。
その空元気な笑い声の中に、微かに嗚咽が混じっていたこと。
濡れる短い睫毛を、私は見逃していなかった。
十七で私を産んで、お父さんが死んで―
私がお母さんにしてあげられることなど、あるのだろうか。
私さえいなければ、もっと幸せな人生を歩めたのではないか。
お父さんが死んだのだって、家族を養うためと四六時中働き回り、倒れたからだ。
私が産まれなければ、2人ともこんな悲痛な目に合わなくて済んだのに。
ふと、そう思ってしまう時がある。
そして私とお母さんの、唯一の心の拠り所だったちろの死―
もう何も、考えられなかった。
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