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第六話
ちろ。
ちろ、ちろ。
ちろはどこに行ってしまったの?
私とお母さんを置いて、どこに散歩に行っているの。
違う世界になんて行かないで。
ちろ、帰ってきてよ。
ずっと一緒にいようねって、約束したじゃない。
「ねぇ、お母さん。ちろって呼んだら流れ星、流れるかな。」
私が振り返ると、お母さんは寂しそうに笑った。
「ちろ!」
私の叫びが黒の闇間に、吸い込まれていく。
その瞬間。
この世のものではないような光を纏って、大きな星が夜空を横切った。
東の空から西の空を、ちろは縦横無尽に駆け抜けていく。
ちろの魂は私たちの上空を、笑いながら走り去っていった。
ちろの高らかな鳴き声が、頭蓋に木霊して冴え渡る。
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