それは一室で、密やかに

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「ね、ジェイムズはこのあと寝室に行くんでしょ? 私も一緒に連れて行って」 「……面白いものは何も置いていないが」  動揺を抑えて言うと、フレデリカは「面白いものなんていらないわ」とあっさり言う。 「私が欲しいのは、私が幸せになれるものよ? いつものようにね」  なるほどと思う一方で、果たしてどうしようか悩んだ。  いつもなら一緒に居る場所は書斎なのだが、今回は寝室。少々勝手が変わってしまう。  しばらく眉を寄せていたジェイムズだったが、結局はフレデリカを抱いたまま寝室へ向かった。彼女を椅子に座らせて、自身は椅子の横にあるベッドへ潜り込む。 「私なんかを見ていても、幸せなど来ないだろうに」 「いつも言ってるでしょ。私が幸せかどうかを決めるのは、あなたじゃなくて私なの」  フレデリカがぴしりと言い切ると、ジェイムズは小さく溜息を吐く。 「……あまり遅くなってはいけないよ」 「はぁい」
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