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「だー」
「どうした、蒼永?」
「お父さんの元にいきたいのかしら」
「あー」
蒼永は青人さんに向かって手を伸ばすので、青人さんに代わってもらった。
「海、気持ちよかった?」
「うー」
「まだわからないか。蒼永がもう少し大きくなったら、海水浴もありかな」
「その時は舞ちゃんたちも誘いましょう!」
「そうだね」
それから砂浜でお城を作った。青人さんはすごく手先が器用で、簡単にだけど大きな砂のお城を作ってくれた。
多分蒼永も喜んでいて、一緒にトンネルを作った。
「蒼永のおててつかまえた!」
トンネルの中から手を伸ばし、蒼永の手をきゅっと掴むと、蒼永はにっこりと笑った。
「あっ笑ってくれた!」
蒼永は大人しい子でちょっとぼーっとしているところがあるんだけど、たまにこうして笑ってくれると嬉しい。
「かわいいな」
青人さんは目を細めて蒼永の頭を優しく撫でる。
女の子がいいなんて言っていたけど、今はこの通り立派なパパだ。
蒼永はもう少し大きくなったら武道のお稽古を始めることになっているけど、私は何も心配していない。
だって私と青人さんの子だもの、何があってもきっと乗り越えられるわ。
私が両親と一緒に過ごした時間はたった12年だったけど、それでもたくさんの愛情を注いでもらった。
今度は私が、この子にありったけの愛情を注いであげたい。
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