2.偽装のためのデート

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 その言葉を飲み込むのとコーヒーを飲み込むのが同時で、思わず咽せそうになった。 「デート……ですか?」 「はい。俺は喋るのが得意じゃなくて、店長にももう少し愛想良くしろと言われているんです。 実を言うと、今も緊張しています」 「そうなんですか?」  全然そんな風には見えない。  待ち合わせの時はあんなにスマートにナンパから助けてくれたのに。 「ですからその……咄嗟の時にボロが出ないためにも、本物の恋人らしく振る舞ってみるのはどうかなと……」 「偽装なのに、そこまでするんですか?」 「偽装だからこそです。お話を伺う限り、伯母さんは並のことでは納得しないと思います。 より恋人らしさ、というものが必要かと」  なるほど。  それを言われると、私も恋人らしさというものはよくわかってない。  何しろ恋愛経験がないから。 「わかりました。デートよろしくお願いします」 「そんなに深々頭を下げなくても……」 「いえ、ご指南いただく気持ちで臨みます」  すると、青人さんの表情が崩れ、初めて口を開けて笑った。 「面白いですね、永美里さん」 「そうでしょうか」 「恋人同士ですから、敬語はやめましょう」 「でも、年上なのにタメ口は……」 「恋人らしく振る舞うんでしょ?」
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