1.初恋と偽装恋人

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 だけど、シャンプーは丁寧でとても気持ちが良い。 「……痒いとこ、ないですか」 「はい」  シャンプーを終えて席に戻ると、アシさんはペコっと頭を下げて行ってしまった。  それから馬野さんが来てくれて、いつも通りカットとパーマをしてくれる。 「……あのアシスタントさん、新しい方ですか?」 「ああ、一応スタイリストデビューはしてるんだけど、うちに来たのが最近なんだ。 無口で接客は下手だけど、腕はいいよ」 「そうなんですか」 「……ところで永美里ちゃん、聞いたよ。結婚するんだって?」  馬野さんがそう言った瞬間、後ろからガシャーン!という大きな音がした。  どうやらさっきの新人さんが何かを落としてしまったらしい。 「すみません……」 「大丈夫か?リュウ」 「大丈夫です、失礼しました」 「ごめんね〜永美里ちゃん」 「いえ」  そんなことより、馬野さんの耳に届いているということは、恐らく伯母だろう。 「私は、まだするつもりないんですけど」 「そっか」 「伯母が乗り気みたいで……どうやって説得しようかなって思ってたところです」 「彼氏がいるって言っちゃえば?」 「いませんよ」
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