1.初恋と偽装恋人

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1.初恋と偽装恋人

「縁談、ですか?」 「そうだよ、永美里(えみり)。相手は誰だと思う? 虎橋グループの副社長だ。あの虎橋グループの副社長夫人、いや次期社長夫人になるんだよ!」  伯母は興奮気味に話していたが、私は虎橋グループの副社長ってどんな方だっけ?と自分の記憶を思い起こしていた。  ああ、そうそう。  うちの百貨店に視察に来られた際、何故か美容部員の私が駆り出されて、ご案内して差し上げたっけ。  何故か妙に距離が近くて、おかしな方だった。 「お前の両親が死んでから、育ててやった恩を返す時がようやくきたんだ。 永美里、わかっているね?」  伯母はつまり、こう言いたいのだ。  亡くなった両親の代わりに私を育てた恩返しとして、好きでもない男性と結婚しろと。  拒否権など、私にはないのだと。
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