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1.崩れ落ちた幸せ
「妃乃、俺と結婚して欲しい」
美しい夜景をバックにした高級レストランで、差し出されたダイヤの指輪。
なんてベタなんだろうという思いは少なからずあったけれど、それでも胸が高鳴ったことをはっきりと覚えている。
同じ会社の同期でこの日で付き合って3年になる彼、兵藤歩にプロポーズされた時は、人生最高の瞬間だった。
「はい、よろしくお願いします」
イエス以外の返事などなかった。
歩となら、きっと幸せな家庭が築けると信じていたから。
マーケティング部のエースと言われ、コミュ力抜群で顔が広く、更にはイケメンと評判の自慢の彼氏。
それだけじゃなく、優しくて子ども好きで同じ会社に勤めているからこそ、色んな意味で理解してもらえて。
本当に最高の彼氏だと思っていた。
そして最高の婚約者だと思っていた。
この時までは。
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