1.崩れ落ちた幸せ

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「おはようございます」 「天王寺(てんのうじ)さん、おはよう。 早速だけどいい?次の企画なんだけど」 「もう出来てますので、後で資料お待ちしますね」 「もう!?流石天王寺さん、頼りになるなぁ」  私、天王寺(てんのうじ)妃乃(きの)は大手広告代理店に入社して4年目。  入社当時から企画制作課に配属され、去年くらいから追われるばかりだった仕事に心の余裕が生まれ、仕事をすることが面白くて楽しくなってきた頃。 「あれ!?妃乃さん、その指輪って……!」 「ああ、実は……」 「兵藤さんとですか!?おめでとうございます〜!」 「ありがとう」 「妃乃さんの企画、部長がめちゃくちゃ誉めてたそうですよ。 仕事もデキて恋も順調。妃乃さんは憧れの先輩です〜」 「やだなぁ。やめてよ、塔子(とうこ)ちゃん」  この子は後輩の金城(かねしろ)塔子(とうこ)ちゃん。私より2個年下の24歳。  入社当時から面倒を見ていて、私を慕ってくれるかわいい後輩なんだけど、ちょっと問題もあって……。 「天王寺さん!聞いてください! 金城さん、まだ別の人に仕事押し付けて帰っちゃったんですよ!」 「またなの?」 「親が急病って言ってましたけど、今月何度目!?って感じなんです! 天王寺さんからも言ってください!」  サボり癖というか、押し付け癖とでも言えばいいのか、誰かに仕事を押し付けて帰ることが多い。  あまりに目に余るのだけど、かわいくて甘え上手の塔子ちゃんは部長からも気に入られていて、なかなか強く言えない。  だけど、困っている人がいるのだからいい加減見過ごすことはできない。
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