1.崩れ落ちた幸せ

3/11
前へ
/185ページ
次へ
「塔子ちゃん、一人で抱えられない案件なら先に私に相談して。 手伝えるかもしれないから」 「え?」 「誰かに頼まないとできない仕事なら、分担してやりましょう」 「……はぁい。妃乃さんは本当に頼りになりますね〜」  はっきり言ってしまうと角が立つので、まあこんなところかな。  上司にも結婚を報告し、近々両親との顔合わせも決まって着実に準備が進んでる。  結婚しても仕事は続けるつもりなので、もちろん手は抜かない。  とにかく毎日が充実していた。  何もかも上手くいっていると、そう思っていた。  ある日の帰宅途中、母親から電話がかかってきた。 「もしもし」 「もしもし、妃乃?今大丈夫?」 「うん、どうしたの?」 「顔合わせの日なんだけど、やっぱりずらしてもらえないかなぁ? お父さん、どうしても外せない大事な仕事が入っちゃったらしくて」 「そうなの?わかった、歩に聞いてみるね」 「ごめんね!大事な日なのに。 お父さんもすごく謝ってたよ」 「仕方ないよ。大丈夫、何とかするから」 「ありがとう。それからね、皇輝(こうき)くんが帰ってくるんだって!」 「え、ほんとに?」 「そうなの!もし予定が合えば、皇輝くんも同席してもらったら?」 「ああ、そうだね。考えてみる」
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2887人が本棚に入れています
本棚に追加