9.絆されて、甘い熱

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 高校生の時、お母さんが結婚を考えている人がいると伝えられた時のことを思い出していた。  実の父は私が物心つく前に死別している。  飲酒運転による事故死だと聞いていた。  お母さんは詳しく話したがらないけど、実父はアルコール依存症でまともに働かず、機嫌が悪くなると暴力を振るっていたらしい。  女手一つで育ててくれたお母さんが幸せになれるなら、再婚には賛成だった。  実際初めて会った今のお父さんは、とても優しくて良い人だった。  同い年の息子がいて、まさか同じ高校の同級生だったことには驚いたけど、皇輝も含めて仲良くなりたいと思った。  お母さんのためにも、四人で家族になりたかった。  これからもずっと家族でいられると思っていた。  皇輝ともずっと姉弟でいられると思っていた。  でも――、皇輝は違ったんだ。  また昨晩を思い出して、熱が上がりそうになる。  どうしていいのかわからない。  あの時拒まなかったのは、皇輝が好きだから?  それとも熱に浮かされていただけ?  自分の気持ちがわからない。  好きだったとして、この想いを受け取っていいのかもわからない。  だって私たち、ずっと姉弟だったじゃない……。  そう思っていたのは、私だけだったのかもしれないけれど……。  いつの間にか瞼が重くなっていて、気づいたら眠りに落ちていた。
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