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追走
街の喧騒。
「戦況は悪化して行ってるって話だ…」「そんなわけない、我が国が負けるわけ…」「いやいやでも…」「新しい兵器が…」
「確か、バレッタ、とか言ったか…」
スケール音が耳を支配し、綺麗な町並みが高速で流れていく。カフェやらブティックやら宝石屋やら…
「この街はまるで映画のようだな。」
隣で別のバイクを操縦する女性がそう話す。
「そうですね、ロケ地として有名らしいです。」
実際、女優らしい人物を複数のカメラが囲っている様子が、そこそこの頻度で見られる。何かの撮影か、パパラッチか…別に興味は無いけれど、華やかな衣装を纏った男優女優は嫌でも目で追ってしまう程の存在感を放っていた。
「全く、今国がどんな状況にあるのか知っててこの余裕ぶりかね…」
「先生も余裕振っていますよね。」
ツッコんでも反応はなかった。
「さて…と、シュペー、右に複数人居るのは、」「分かってますよ。」
食い気味に答えると先生は嘆息してから宜しいと返す。
信号は赤、止まっているうちに銃の安全装置を外しておく。オートマの軽い拳銃、しかし範囲5メーターの人を殺すのは容易い。相手の車は僕らの少し先。まだ圏内ではない。
信号の色が青に変わる。相手の車は左折、追いかけると少し人だかりが少ない気がする。
「ここで仕掛ける気だね。そうは問屋が卸さないよ。」
問屋は僕らなのかと内心ツッこむ。どちらかと言うと逆な気もする。反乱者が反乱者を潰すだけなのだから。
そうしているうちに、相手の車が急な加速を見せる。車間をすり抜け明らかな危険運転
だ。追いかけると町中というのにスピードメーターは80キロを示す。
パンッと軽い音がした瞬間相手の車がパンクする。町中だろうが関係ないと、先生が早速銃撃発射を行ったようだ。隣にて「お前も銃取り出せ、」とジェスチャー。了解と返し銃を取り出すと、もう片方の後輪を射撃、車両は明らかにスピードが落ちたが、後輪を滑らせ危なっかしい運転に代わりはない。
突如として先生と自分以外の射撃音。前からの銃弾、車から顔を出す相手。
「彼奴等撃ってきやがったな…」
最初撃ったのは自分達だろ。
ホイールがアスファルトと擦れるキリキリという音と銃声を聞いた市民の叫び声が混ざり合って、丁度気持ち悪い。
先生が前に出る、遅くなった車と並走すると、銃を構えられる前に車体の屋根に飛び乗る。銃の発光がチカチカと光る。弾はこちら側にも飛んでくる。
一方で、先生は屋根の上から運転手を射撃したようで、間もなく車両が制止した。
車体から飛び出す屈強な男四人。そのうち二人はこちら目掛けて発砲しながら向かってくる。
銃口は明らかにこっちを向く。弾の軌道が読みやすくてたいへん助かる。
「逃げてみろよッ!」バイクでそのまま一人に突っ込むと、グッと苦悶の表情を浮かべる。倒れた身体の上を踏んで通過すると、バイクが倒れた。
「痛っでえ゛」とこちらも苦悶の表情。
しかしまあ、すぐに立ち上がりはした。
弾を避けつつ、もうひとりに近づき、一気に身体にしがみつく。太い腕に脚を絡め、首を脇に抱える。
思いっきり力を入れると相手の顔がどんどんピンク色に変色していく。相手の力が弱まったので、容赦なく首を回してやると、パキッと乾いた音がした。
バイクで引いたほうに一発弾丸をぶち込んで自分の分は終了。
先生の方を見ると、先生は一人の胸ぐらを掴み尋問をしている。しばらくしてめぼしい物はなかったのか、相手の頭に向けて引き金を引いていた。
「駄目だ、手掛かり無し、ただの資金調達だよ。」
「強盗ですか…サイレンも鳴ってますし、速いところ逃げましょうか。」
「そうだね、」
もう一度バイクを走らせる。
少し急ぐ。
少し時間がたち、だいぶ遠くまで逃げた。追ってはもうない…と信じたい。
一息つく所で先生が口を開く。
「奴らバレッタを国からぶんどったって話だけど、ホントなのか信憑性が怪しくなってきたな。」
無言を返す。
「そうだな、バレッタを使用することにお前が嫌儲していることは分かってるよ。私もいい気持ちではないしね。」
「なら、なぜ先生は欲しいんですか?バレッタが。」
「……拳銃が弱いから…では駄目かな?」
「先生はすでに強いですよ。」
沈黙が痛い。こめかみにズキンズキンと痛みが走る。
「私は少し腕っぷしのあるただの人間だ、だからこそ、バレッタのような、魔法に憧れてしまうものさ。私は、絆の力とやらが見てみたい。」
バレッタ、
銃火器内に特定の岩石を埋め込んだもの。
この加工を施した武器には女性の人格と身体が発現する。銃の形と人の形どちらにも自由に変形することができる。
バレッタと使用者(オーナーと呼ぶ)の間には相性が存在し、悪ければ、引き金を引くことすら出来ない。逆に良ければ、強力な力を引き出すことが可能。
オーナーとバレッタの関係が良化するほど、バレッタの性能が上がる。
バレッタの製造過程は知られていない。
倫理という点にだけ目を向けなければ、戦争に置いて最高のアドバンテージになる武器
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