nontitle No.1

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 30分程歩くと人口の燈はなくなり、月明かりだけが俺達を照らすようになった。  星空は綺麗で、打ち寄せる波の音、二つの砂を踏む音だけがここにあった。  ふと思い立って波打ち際に行き、波に足をつけた。波は適度に温くて、気持ちよくて、一歩ずつ海の方へ進んだ。  胸が浸かるぐらいまで進んだ時、ヒカルの方を振り返った。  「気持ちいいよ」  ヒカルも足を波につけた。  「気持ちいいね」  そう言ってヒカルも俺の方へ来た。  ヒカルが俺の所に着いた時、ヒカルは首まで海に浸かっていた。 徐にヒカルは防水ケースに入ったスマホのライトをつけた。それが水中で無作為に屈折してエモーショナルな気持ちになった。  「綺麗だな」  「じゃああげるよ」  少し驚いてヒカルを見ると、ヒカルは防水ケースについたネックストラップを俺の首に掛けた。  「此処で死ぬつもりなんでしょ」  心が見透かされていた。  「だからあげるよ」  涙が込み上げてきた。  「最後ぐらいね」  悲しいとか、苦しさとか、嬉しさとか、申し訳なさとか、そういう色んな感情で心が溢れて、俺はヒカルを抱きしめた。  骨が折れるほど強く。  「、、痛いよ、」  「ごめんヒカル。全部俺のせいだよ」  嗚咽を漏らしながら言う。  「ヒカルを壊して捨てたくせに、寂しいとかそんな理由で目の前に現れて」  自分を刺すように言う。  「俺は生まれてくるべきじゃなかったんだ」  心の底からの本音だった。    ヒカルはため息を吐いてから軽く笑った。  「僕はミツルを憎んでなんかないよ」  ヒカルは優しく言った。  「初めての親友になれて」  思い出すように言う。  「僕は嬉しかったよ」  その言葉がどれほど俺の心を救い、同時に込み上げていた罪悪感を増幅させただろうか。  「このまま岸に戻る?」  「でも俺はやっぱり生きてちゃだめだよ、」  ヒカルは俺の顔に手を当てて、キスをした。  長くて、濃いキスだった。  「じゃあ、一緒に死のうか、」  一歩ずつゆっくり進む。顎まで海に浸かる。    もう一度キスをして、俺達は海に倒れ込んだ。  
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