6.137話 失恋2話 「野外観察の授業」

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6.137話 失恋2話 「野外観察の授業」

 今日、私、先崎春美は、井上浩くんと車待機。というより、張り込み。2020年、北海道の5月はまだ寒い。森川さんと片平さんは新聞記者になりすまし、北海道議員の家に向っている。  コロナ禍により緊急事態宣言は5月15日、金曜日に解除された。とは言っても、コロナ感染には注意をして仕事をしないといけない。私と井上くんは、議員の息子のアパート前で張り込みだ。張り込みは暇。でも、目を離せない仕事。  5月25日、月曜日。俺たち「ふくしま探偵局」第3課の4人は北海道に来た。コロナ禍の中でもあるが、事件は減らない。今回は、北海道議員の依頼だ。身内の誰かが議員の転覆を狙って相手の党にスクープを流しているらしい。まあ、北海道の議員1人がどうなっても、私に人生に変化はない。隣の井上くんもそう感じているらしい。明らかに面倒くさそうな態度で助手席に乗っている。  しかし、局長の父、大木泰蔵会長が昔、世話になった人らしく、森川さんも今回は渋々引き受けた。森川さんは政治家が嫌いならしい。 「先崎さんはいつも、車待機の時、どうしているんですか?」 井上くんがもうしびれをきらしたらしい。 「車待機と言われても、色々とやることがあるから、今日のように張り込みは少ないの」 「そう言われれば、そうですね。今まで『車待機』言われても、建物の裏で犯人を待っていてみたり、事が起こった時は入口を閉鎖したり、じっと車の中で待っていた事はなかったですね」 「まあ、臨機応変ね。森川先生が色々指示してくれるから」 「でも、今回は暇ですね」 「そうね。でもこれが仕事」 「じゃ、何か森川さんの昔の話を聞かせて下さい。目はしっかり、張り込みしていますから・・・」 「口と耳は仕事をしなくていいの?」 「そういう訳じゃ・・・」 「また、大学の頃の話でいい?」 「もちろん」 私は、温かい缶コーヒーを一口飲んで、昔話を語り始めた。 ☆  二本松大学の生物科には野外観察という授業がある。年に数回、行われるが、その時の天候や教授の事情で変わる時が多い。2004年、私が大学2年生の時の最初の野外観察は、3年生と合同で行う事になった。もちろん、現地集合、現地解散というアバウトな点が、生物専攻らしさをあらわしていた。  今回、行われる事になった野外観察は、「福島市内の植物と小動物」というのがテーマ。テーマはあるが、現地に行ってみて、あまりにも、実情と違う場合、その時点で、テーマが変更になる。これも生物専攻らしいアバウトな点である。  私達2年生の最初の野外観察は、福島市の森合地区にある福島県立美術館と福島県立図書館周辺。森合地区は、福島市街の北側で、信夫山の南側に位置する。  誰がその場所を決定したかは、学生で2年生の私にはわかるはずもなかった。福島県立図書館と福島県立美術館は、元々、大学があった場所で、その後の1984年に現在の場所に福島県立図書館が移転した。それまでは、現在の福島市立図書館のある交通の便の悪い場所にあった。また、福島県立美術館は、その時に開設されたらしい。  その場所は、森合地区の中でも、飯坂電車が走るの東側に位置し、周囲は閑静な住宅街に囲まれている。北側には信夫山がそびえている。その近くを通る飯坂線の「森合駅」が、この福島県立図書館と福島県立美術館設立のため、1991年、平成3年に「美術館図書館前駅」と変更された。  福島県立図書館は約40名の職員が働き、図書の閲覧だけでなく、インターネットや新聞、雑誌まで閲覧できるらしく、「こどものへや」という研究室もあるらしい。  また、隣接する福島県立美術館は常設展と企画展があり、いつもは常設展しか行われていない。特に福島県出身の斎藤清の版画やアンドュリュー・ワイエスの「松ぼっくり男爵」を所蔵している事が有名ならしい。  しかし、私はまだ、この時点で、どちらの施設も利用した事がなかった。  5月26日、水曜日、二本松大学生物科2、3年生合同による野外生物観察授業がその美術館と図書館の周囲で行われた。本来なら、もう少し前に行われるわけだっかが、今年の5月は雨が多く、最終週まで延期になった。  二本松大学理数学科生物専攻の学生は1学年5名なので、2年生と3年生の生物専攻学生を合わせても10名。そして、それぞれの担当教官が1名ずつ付いて、12名で現地集合になった。  なぜ、福島県立美術館と福島県立図書館が、私達、二本松大学の生物科の課外授業の場所に選考され、許可になったを後に3年生の森川優先輩から知った。私達2年生の担当教官の大木展子先生と、美術館の館長、尾形充さんが知り合いのようで、許可が出やすかったようだ。しかし、なぜ、森川先輩が、そのようなことまで知っているのか、私には、分からなかった。  野外観察の日程は、午前9時に集合し、班ごとに観察し、昼食をとって、午後も観察の続きを行い、それぞれ自宅でまとめのレポートを作成し、後日提出する。私達学生からみると、とても気分が楽な学習だった。晴天で雨でなければ、とてもよい観察になると思っていた。  当日、朝、私は、待ち合わせに指定された、福島県立美術館と福島県立図書館の入口の中央に集合した。もう既に私達2年生の担当教官の大木展子先生と3年生の担当教官で、若い男の講師の小笠原海人先生や、数人の同級生も来ていた。  私達は、学生が全員集まると、班を作成することになった。班は、小笠原先生が提案した。植物班を2つ、動物班を2つ、それぞれ教官と学生を混ぜて、3名で班を作成する事になった。学生から希望を募ったが、動物班に偏りが出たため、小笠原先生が、文句の出ないように、くじを作成してくれて、班分けをしてくれた。  今の所、私達の生物科の中の5人で、お互いに付き合っているとか、3年生の先輩と付き合っているという噂はなかったので、人間関係で問題がないと思った。しいて言えば、どちらの担当教官も若く、大木先生が20代で美しく、男子の学生からも人気があったのに対し、小笠原先生は、今年、講師として、この二本松大学にきた若い先生だったという事くらいだろう。  最初に小笠原先生の提案で、それぞれの班長を決めてから、班分けする事になり、それぞれ、班長として、1班が植物中心で小笠原先生、2班も植物中心で3年生のクラス代表の森川先輩、3班は動物中心で大木先生、そして4班が動物中心で3年生のクラス副代表の森静香先輩があたることになった。  小笠原先生の作成した、学生の班分けくじ引きをした。まず、箱の中から3年生がくじをひいた。そして、残りの2年生がくじを引いた。私が最後で、結局残った植物班の1班になった。  植物班は、1班が私と3年生の遠藤美香先輩と小笠原先生。2班が3年生の森川優先輩と2年生の今井海くんに近藤舞さん。  動物班は、3班が大木展子先生と3年生の上原かおり先輩と2年生の島村翔くん。そして、4班が3年生の森静香先輩と森元良人先輩に2年生の斎藤順一くんに決まった。  4つの班に観察する場所を指定された。美術館と図書館の北側、南側に分かれた。私達1班は、北側の植物。2班は逆に南側の植物。3班が南側の動物。4班が北側の動物を観察することになった。美術館と図書館は、南向きで、南の方の土地に多く植物が集まっていた。  とても陽気が暖かく、近くの幼稚園児が先生に連れられて、散歩に来ていた。私は、植物の観察をする事を忘れて、その可愛らしい姿に見とれていてしまった。幼稚園児達は、図書館の東から二列になって入ってきて、芝生の庭で遊びながら過ごし、その後、中央にある水たまりのようなプールで憩い、美術館の西側にある小さな森の中で、お弁当を食べていた。  私達は、その幼稚園児とは反対方向の西側から植物を観察した。美術館の西側には、小さな森があり、小川が流れていた。しかし、その小川も、水をポンプでくみ上げ、流しているだけの見せかけの小さな小川だった事を知ると、少し愕然とした。  私達1班はその小さな森のような場所から、大木、低木、草木に分け、観察とスケッチを行った。私は、大木の係になった。しかし、この森は大変親切で、それぞれの木に名札が着いていて、いちいち木の名前を知らなくても、私のような木の名前にうとい人間にでも、容易に名前が分かった。  私は、シラカシ、ムクゲ、コブシ、モクソウチク、シラカシの5種類まで観察した。集合の声がかかり、先程まで幼稚園児が休憩していた、美術館の西側の小さな小川の流れる森で4つの班が集合し、各自持ち寄った昼食を食べることにした。  2年生の中には、昼食をコンビニで買ってきて、食べていた人もいた。しかし、3年生の森川先輩と森元良人先輩は人気があり、森静香先輩や遠藤美香先輩、そして、上原かおり先輩が、多めの弁当を作り、2人にあげた。実は、私は前日、森川先輩に、お弁当のことで声を掛けておいた。 「大変だからいいよ」 速攻で断られていた。森川先輩は自分でお弁当を持ってきたようだったが、人がいい森川先輩は、自分の弁当を食べた後に、女の子から貰った弁当をしっかり食べていた。  私は、昼食の後、森川先輩に声を掛けて、どのくらい観察が出来たか、レポート用紙を見せてもらった。森川先輩は、まばゆい光の中、楽しそうに鼻歌を歌っていた。 「森川先輩、先輩の午前中のレポート、見せて頂きませんか?参考にしたくて・・・」 私は森川先輩に尋ねた。すると、素直に私に見せてくれた。  森川先輩のレポートは、私の物とは比べ物になっていなかった。植物のスケッチだけでも、モッコク、ムクゲ、ソメイヨシノ、ヤマモミジ、ウメモドキ、コブシ、モチノキ、ヒイラギモクセイ、ハナモクレン、ヤマボウシ、コナラ、イチイ、ヤマツバキ、と私にはとても追いつけない数の木や花が描かれていた。  それも、葉だけのスケッチだけでなく、木全体や、咲いている花、葉の付き方のスケッチや、葉や花、実の付き方、周囲の太陽の当たり方など、生物科の見本のようなスケッチだった。私は、午後からの観察が思いやられそうになった。 「本当は、動物班に入りたかったのに、植物班になってしまって、このくらいしか観察する事が出来なかった」 森川先輩は謙遜していた。  そう言えば、森川先輩は入学してから、ずっと小動物、とりわけ、顕微鏡で観察できるようなダニなどを研究している変わり者という噂があったので、やはり、動物班に入りたかったのだろうと思った。しかし、彼の観察ノートを見た限りでは、植物班でも1、2位を争うようなレポートが作成出来るような、内容を観察していた。  そんな時、近藤舞さんが見つけた、何かの瓶を取りだした。なかなか開かないようで、私は森川先輩に声を掛けて、その瓶を開けてもらった。中身の飲み物は、全く入っていなかったが、その代わりに一枚の紙が折りたたんで入っていた。 「それ、さっきの幼稚園児が持っていた瓶と同じだよ。舞、どこで見つけたんだ?」 島村翔君が尋ねた。 「図書館の東側のサザンカの木の下の方に落ちていた」 舞さんが、何も気にしない口調で答える。舞さんは、物事に執着しないおおらかな性格をしている女の子だ。それが、彼女の最大の魅力といってもいい。  2班では、森川先輩が大木、近藤舞さんが低木、今井海くんが草木の係になっていたため、低木のサザンカを観察していた近藤舞さんが見つけたのだろう。 「たぶん、さっきの幼稚園児が飲み物を飲みたいのを我慢出来ずに、途中で飲んでしまったのかもよ・・・。それを、先生に見つからないように、この図書館の東側のサザンカの下にでも隠したか、投げたのだろう」 3年生の森元良人先輩が話した。そう言えば、先程まで幼稚園児がこの場所で休憩していた時に飲んでいた瓶と同じ柄のものだった。  それでも、森川先輩は苦労して、その瓶に入っていた1枚に紙を取りだした。 「これはどう見ても、幼稚園児の落書きだろ・・・」 森本先輩が感想を話す。 「この数字のようなもの、今、幼稚園か何かで学習したんじゃない。それを、飲み干した瓶に入れたんだよ」 順一君も同調した。そして、順一くんの意見でそこにいた皆は考えを一致させた。  私もみんなの中に入って話をしている物を見ると、少ししわくちゃになった小さな紙があった。字もきちんとは書かれておらず、私も、幼稚園児の書いた少し幼稚な字であった。  その紙には、「140」という数字と、「20~30→35.5」という数字などが書かれていた。 「この瓶、どうする?」 「私が図書館の不燃物に捨ててきましょう」  一番気配りの森川先輩が預かり、数字か書かれた紙と一緒に、図書館のゴミ捨て場に向かって行った。私達は、靴を脱いで、小川で足を冷やしたり、日陰でボーッとしたりして、わずかな休憩時間を過ごした。 午後はもっと日差しが強くなり、午後4時まで行う予定だったものを変更し、午後3時で終了することに変更になった。だから、観察は残り、2時間の勝負になった。私は、森川先輩に負けまいと、必死に図書館の北側の、西から東へ移動し、カツラ、シラカシ、サンゴジュ、ドウダンツツジ、ウメなどの観察に専念した。  そこで事件が起こった。近藤舞さんが、何かを土の中から発見したらしいと話が伝わってきた。すでに同じ班の森川先輩がその場所を丁寧に観察していた。 「何があったのですか?」 大木展子先生に尋ねた。 「今、森川くんが調べている」 「毛布が木の根っこに・・・」 いつも賑やかな近藤舞さんが、この時ばかりは静かだった。 「大木先生、警察を呼んでいただけますか?」 森川先輩が動かしていた手を休めて大木先生を見た。 「何と言えばいいの?」 「白骨死体が発見されたと・・・」 絶句した。福島市のこんな場所に白骨死体なんて・・・。  それからが大変だった。私達の野外観察の授業は中止。美術館長の尾形充さんもあわてて、発見場所に来た。  そして、私達の話を聞いたのが福島警察署に勤務する吉田繁警部補だった。しかし、森川先輩は吉田繁警部補といきなり挨拶をした。 「また君か・・・森川くん」 「お世話になっています。吉田繁警部補」 「先日の事故は、本人の前方不注意という事で処理されたよ」 「それはありがとうございます」 どうやら、2人は知り合いらしい。 「で、『森川行くところ、事件あり』という事ですね」 「違います。今回は、後輩が見つけました」 「でもね・・・」 結局、吉田繁警部補は、私達から有力な情報は聞けなかったらしい。  今回、この授業もカリキュラムの1つで、予定されていたもの。この場所も、大木展子先生が許可が出やすくて、福島駅から近い場所を選んだこと。私達は1時後には、解放された。しかし、森川先輩と吉田繁警部補は、その後も何か話していた。  私は、「どうせ二本松大学に帰るんだろう」という小笠原先生のお誘いを断って、森川先輩の話を終わるのを待った。他の人たちはそれぞれに自分の家に帰って行った。私は森川先輩が美術館から出てくるのを待って、一緒に飯坂線の駅に向かって歩き出した。 「疲れたからお茶でもしようか?」 森川先輩のありがたいお誘い。近くの「いちょう並木」という喫茶店に入った。小さい。誰もいない。椅子の数、10脚。マスターのおじさんも渋い感じ。流れているBGMのJAZZも渋い。  森川先輩はカフェオレ、私はアメリカンを注文した。 「どうでした?」 私が声をかける。森川先輩はスケッチブックを取り出す。 「コブシ、モッコウ、サツキ、ヤブツバキ、シラカシ、モッコウチク、コウバイ、キンモクセイ、ユズリバ、イヌツゲ、イロハモミジ、ハナミズキなど大変だった」 話のポイントがずれている。 「違うという事が分かっていますよね」 「・・・」 森川先輩は、誤魔化す。 「あれは警察の仕事・・・」 「でも、森川先輩の事ですから、興味津々ですよね」 「そうかな・・・」 「最初に何から調査します?」 「だから、あれは・・・」 「どこに行きます?」 すると、カフェオレとアメリカンが運ばれてきた。カップも渋めの色。カフェオレは薄めの茶色。アメリカンがグレイ。全く若者を意識していないお店だ。誰もお客が来ないはずだ。 「ところで、小笠原先生から何か誘いはなかった?」 森川先輩は見ていたのだろうか? 「今日、学生で二本松大学方面に帰るのは、大学の寮に住んでいる春美さんだけ。そして、小笠原海人先生は研究の続きがあると先程はなしていたから、大学に戻ると思った。大木展子先生は、この近くに自宅があるし、そのまま帰るはず」 「大木展子先生の自宅を知っているのですか?」 「ああ、以前、行った事がある」 2人はどんな関係だ? 「小笠原先生に、一緒に帰ろうと誘われました」 「やはりね・・・」 「何かあるのですか?」 森川先輩は、カフェオレを一口飲む。 「薄いなこのカフェオレ」 私もアメリカンを一口飲む。 「このアメリカンも・・・」 2人でマスターを見る。彼はそんな私達を気にしていないように、グラスを拭いている。 「あの幼稚園生の落書きのような紙、春美さんはどう思う?」 いきなりの質問だった。というか、森川先輩はいつも、私が考えていない質問を今までしてきたので、慣れてはいたが・・・。 「何も感じませんでしたが・・・。何か意味があったんですか?」 私がそう話すと、森川先輩は、図書館のゴミ箱に捨てたはずの瓶とその栓、一枚の紙を持ってきた。 森川先輩はそれらをテーブルの上に置くと、また、カフェオレを一口、飲んだ。 「春美さん、真相を知りたいかい?」 いきなり、森川先輩にそう言われて、私は、驚いた。先程まで、幼稚園児の落書きだと思っていたものに、「真相」だなんて・・・。 「真相なんてあるんですか?」 「ある。しかし、知らなくてもいい事もある。知ってしまうと、大変になる事もある。それを、春美さんが克服できるかなんだけど・・・」 「私が関係するんですか?」 「私は、そう思っている」 「先輩が支えてくれるなら、克服出来ると思います」 「支えられるかどうかは、わからない。でも先輩としてなら・・・」 「それだけで結構です。精神的に支えてくれたり、何かあったりした時に助けて頂けるなら、という事です」 「そういう事なら、手助けできると思うけど・・・」  それから、最初に話を切り出したのは、私だった。 「先輩は、最初、何が気になったのですか?私は何も分かりませんでした。やはり、この数字の紙ですか?」 「そうじゃない。最初の班分けの時かな・・・」 私はその発言に、驚いた。そんな時から、何を気にしていたのだろうと・・・。 「次は、あの瓶を舞さんが見つけた時かな・・・」 「舞ちゃんが、見つけた事は、知っていたのですか?」 「ああ、舞さんが私に、話したから。『先輩、ここに何かありますよ』って・・・」 「それで、森川先輩の推理はどうなんですか?」 「先程話したように、聞かない方が良かったという事もある。大丈夫かい?」 「はい。先輩が今、目の前にいますから・・・。それに、そこまで話しておいて、はい終わりじゃね・・・」 「まず、あの班分けの仕方だけど・・・」 「それが・・・?」 「それは、小笠原先生が作為的に行った班分けとしか考えられない。班分けの仕方を思い出して欲しい。  まず、2人の先生と、3年生の代表をそれぞれの班長を選出した。小笠原先生は、私が動物を専攻し、森さんが植物を専攻していると知っているのに、わざわざ、それを逆にした。この野外観察の授業を成功させたいなら、私が動物班、森さんが植物班にするはずさ。しかし、逆になったのは、私を動物班にさせる事を嫌がったからだろう。  つまり、春美さんを小笠原先生と同じ植物班にして、私と同じ、動物班にしたくなかったからさ。でないと、同じ場所を1班と2班が行動し、あの瓶を私達の班が発見してしまう可能性がある事だ。  そして次に、小笠原先生は、上手に春美さんを自分と同じ班にするように、紙に細工をして、班分けを行った。簡単な手品さ。  箱の中に3年生の班分けの紙を入れ、そして、今度は、2年生に箱の中に入っている紙を引かせる。最後を春美さんにしておいて、最後から2番目の舞さんの時には、箱の中に入っている紙、両方に2班と書いておく、そして、春美さんには引かせない。 『もう1班しかあいていないね』と、言って・・・。  もし誰かが、異議を唱えたら、『1班』と書いておいた紙をそっと箱に入れ、入っていた『2班』という紙をそっと取ればいい。簡単な、意図的な班分けさ。子供でも細工が出来る程のさ」 「そんな巧みな班分けが何かの意味があったんですか?」 「大ありさ。  つまり、小笠原先生は、春美さんを植物班にしたかったのさ。そして、彼は、自分で班編成をしたかった。つまり、私と春美さんを同じ班にしたくはなかった。なぜなら、春美さんが私と同じ植物班なら、私と違う場所を観察させるという事が目的では出来ないからさ。でないと、同じ場所を観察してしまう可能性がある。そうすると、私が先に、この瓶を見つけてしまう可能性が出てくるからね」 「でも、見つけたのは、森川先輩と同じ班の舞ちゃんでしたよ」 「それは、小笠原先生の大きな誤算だったのさ。  彼は、3年生の担当教官だ。2年生の舞さんの大変気まぐれさに気付いていなかったのさ」 「どうして、舞さんの気まぐれが、大変だったのですか?」 「つまり、植物班は2つに分かれ、君達1班は西から東に向かって観察を始めた。  この瓶は、東側の最後に、大木を観察するようになっていた春美さんが見つけるようになっていたんだ。しかし、気まぐれな舞さんが、東側のそれもとても奥の方、つまり1班が最後に行う辺りから観察を行ってしまった。だから、午前中にこの瓶が見つかった。昼食の時の小笠原先生はだいぶ焦っていたと思うよ。気が気ではなかった様子だったから・・・」 「でも、この瓶、幼稚園児の物と同じでしたよね」 「それが違うんだ。  まず、すぐ開けやすい様に、栓が緩んでいた。しかし、舞さんがそれを開けようとして、逆に閉めてしまったため開けにくくなったのさ。だから、その様子を見ていた私は、すぐ開けることが出来た。それによくこの瓶を見てほしい。この瓶は、今日のあの幼稚園児が持っているはずはないんだ」 「なぜです?」 「製造年月日が、10年まえのレア物だからさ。つまり、今日の幼稚園児は、まだ生まれていない物。それも、コレクターには、なかなか人気のある瓶のようだ。印字が逆になっているだろ。ここの横の部分。だから、小笠原先生がとっておいたのだと思う。彼は、実験で使用した薬品の瓶を収集しているという噂を聞いた事があるから、このような瓶の収集癖があるのだろう」 「それじゃ、いつこの瓶を、小笠原先生は仕掛けたのですか?」 「今日の野外観察の場所を、県立美術館と県立図書館に決定したのは大木展子先生だと聞いている。そして、天候も含めて昨日彼が下見をしたとも聞いた」 「それじゃ、あの白骨・・・」 「あれは彼じゃない」 「それじゃ・・・」 「それは後にして・・・。  多分、昨日、下見を兼ねてあの場所に仕掛けたんだろう」 「でも、私に読んでもらいたかったこの文章は、結局、私にはわかりませんでしたよ」 「それも、舞さんが悪い。ほら、良くこの瓶の抜かれた栓を見てごらん。小さく『春美へ』とかいてあるだろう」 そう言われて、抜かれた栓の頭の部分を見ると、「春美へ」と書いてあるような残りがあった。 「つまり、舞さんはそんな事に気付かずに、一気に栓を抜こうとしてしまったのさ。それで、自分の力と汗で、その『春美へ』という部分が消えてしまったのさ。このようにじっくり見ないと」 「それで、この紙に書いてある意味は何なのでしょうか?」 「この文字は一種のラブレターさ。多分、『この瓶を見つけた春美さんが、一緒にいた、班長の小笠原先生に届ける。そして、中身を説明する』という筋書きだったのだろう」 「では、森川先輩には、この数字の意味がわかったのですね」 「たぶんね・・・」 「何だったのですか?」 そういうと、森川先輩はポケットから何か紙を取り出した。それは、日本地図だった。 「先程、県立図書館でコピーさせてもらった」 森川先輩はいつものように準備がいい。 「『140』という数字に心あたりは?」 「何でしょうね?」 「これは日本を通っている東経線、つまり東経140度の事だと思う」 森川先輩は、日本地図を指さす。 「次に『20~30』は同じように解釈すると、北緯という事になる」 森川先輩は、その当たりのページを探る。 「日本に北緯20~30度の部分はありませんよ」 「それがあるんだ。決め手はこの『~』という部分。つまり北緯20度から30度にかけてあるのは・・・」 そう言って、森川先輩が日本地図の中で指を示した場所は太平洋の上だった。そして、そこには、「小笠原諸島」という島々が点在していた。  森川先輩は開いた日本地図の関東地方の「小笠原諸島」に丸印を付けた。 「わかったかい?」 「はい、何となく」 「それじゃ、この『35.5』というのは、つまり、北緯35.5度にある場所。それは、どこかな?」 そう言って、森川先生は、私の方に日本地図を向けた。東経140度で北緯35.5度の場所には、「三浦半島」があった。 「つまり、『小笠原諸島』から『三浦半島』への矢印が示されていたのさ」 また、森川先輩はそう言って、開いた日本地図の関東地方の「三浦半島」に丸印を付けた。 「どういう事ですか?」 「多分、その時、小笠原先生は、君に告白しようと思っていたんじゃないかな?」 「どうしてですか?」 「つまり。『小笠原諸島』から『三浦半島』へ、という事だよ。つまり、『小笠原』から『三浦』へという事になる」 「そう言われれば・・・。」 「だから、『小笠原』が『三浦』を『好意』を持っているという意味を君に分かってもらいたかったのじゃなかいかな」 「・・・」 「私には、彼が、今年、二本松大学に来てから、春美さんを見る目つきは、他の女子学生を見る目つきとは違うものを私は感じるよ」 そこまで、森川先輩に言われるという事は、私も意識をした方がいいかもしれないと思った。 「で、どうした方がいいでしょう?」 「春美さんはまだ19歳だよね」 「はい」 「多分、小笠原先生は25か26歳だ。付き合うのに、年齢的な差は、ない」 「でも、私の好みじゃないですし・・・」 「それじゃ、たぶん、今後、何かのアプローチが小笠原先生からあるだろう。その時、はっきり断るのが大人の付き合い方かな」 「そうします。でも、大人の断り方ですね」 私は、アメリカンのカップを傾けた。 「今、小笠原先生は何をしているんでしょう?いじけていますかね」 「そうは思わないよ。多分、証拠隠滅を図って、もう一度、二本松大学生がいなくなった県立図書館に行っていると思うよ。私が捨てたであろう、この瓶と栓、そしてこの証拠の紙切れを見つけようと、必死に図書館のゴミ箱を漁っていると思うな」 「でも、警察がうようよしていますね」 「そうだろうね・・・」 「で、森川先輩はどうするんですか?」 「大人は、こういう事は知らないふりさ。この瓶もそっと、捨てておいたほうがいいだろう。処分しておくよ」 「ありがとうございます。この事は、聞かなかった事にした方がいいですよね」 「そうだね、春美さんがそれで大丈夫なら・・・」 「大丈夫です。精神的に支えてくれる先輩がいますから・・・」 「・・・」 「で、事件の方は?」 「だから・・・」 「じゃ、話し方を変えます。森川先輩はこれからどこに行きます?」 森川先輩は黙ってしまった。 「わかったよ」 森川先輩は観念したように呟いた。 「あの白骨死体は毛布に綺麗に入っていた。捨てたというより、埋めたという感じだった」 「埋葬ですか」 「少し違うけど・・・。それに、あの白骨死体は、ハナミズキの木の下の埋めてあった。毛布がハナミズキの根っこにからまっていた」 「ハナミズキが植えられる前に埋めた?」 「それは違う。毛布に付いていた土もハナミズキの根付近の土も同じ」 「それじゃあ・・・」 「ハナミズキの木を一緒に埋めた」 「大変な時間がかかりますね」 「それに、ハナミズキの名札が付いていた。埋めてから誰かがあの木を管理していた。あのハナミズキは造園の計画にあったということ」 「計画・・・」 「そう。だからあの後、県立美術館の館長、尾形充さんに話を聞いた。  すると、一週間ほど前に美術館周辺の木を剪定したり植え直したりしたらしい」 「それじゃ・・・」 「それを請け負ったのが、福島市内にある桜井造園」 「今日は、これから桜井造園に行くのですね」 「そう」 「でも、これから大学生が行って、話を聞いてくれますかね」 「そこは、美術館の館長、尾形充さんにお願いした」 「何って?」 「美術館の樹木に感動した大学生が行くから、担当の方を用意してくれと・・・」 「さすが、森川先輩。ずるがしこい」 「バカにされてる?」 「尊敬しています。  でも、報道で今日の白骨死体の事が出たら、犯人は気をつけますよね」 「吉田繁警部補にもお願いした」 「えっ・・・」 「白骨死体発見の報道を1日、遅らせて欲しいと」 「そんな事、出来るのですか?」 「何かわかったら連絡するように伝えた。警察では用心されるので、大学生がちょっと・・・」 「本当にちょっとですか?」 「ちょっと・・・」 「いつも、ちょっとと言いながら、最後までしっかり調査するくせに」 「春美さんとここで別れてもいいけど・・・」 「一緒に行きます」  今、私達は福島駅南側にある桜井造園の事務所に来ていた。いつものように「余計な事は話さない。森川先輩に交渉は任せる。相づちだけうつ」という事を徹底された。  事務所の中は私が想像していたものより、とても綺麗だった。「造園」と名が付くから、土に関係すると思っていたが、全く違った。普通の会社の事務所だった。受付の女の方は制服を着ていて、応接室もそれなりだった。 「尾形館長から聞いております」 担当してくれた笹島さんは、県立美術館図書館造園の資料を手に持って、椅子に座った。 「とても造園を気に入ってくれたそうで・・・」 「造園というか、樹木の種類やその配置です」 「県立美術館図書館は3回に分けて造園する。先週がその1回目。明後日から2回目がある。本当はもう終わっているはずなんだが、今月、雨が多かったから、延期が続いて・・・。だから、早めに仕事をしないとね」 「何人ぐらいでお仕事を・・・?」 「あの班は10人だね」 「全員、社員ですか?」 「うちはアルバイトを雇うお金がなくてね」 笹山さんが資料を机の上に置く。森川先輩が私に合図を送る。私はポケットの中にスイッチを押す。仕掛けてあった携帯の電源が入る。桜井造園の事務所の電話が鳴る。 「笹山部長、お電話です」 先程、ここまで案内してくれた事務の人が笹山さんを呼びに来る。 「ちょっと待っていてくれ」 笹山さんは資料を机の上においたまま、応接室から出て行く。ドアを閉めた瞬間。私はそのドアの近くに行く。森川先輩は、資料をめくり、1枚1枚、素早く写真を撮影する。もちろん、電話は切れている。長くても20秒。でも、森川先輩の仕事は早い。 「帰ってくるよ」 私がドアから椅子に戻る。森川先輩は資料を元の場所に戻す。その瞬間、応接室のドアが開き、笹山さんが入ってくる。森川先輩と一緒に行動すると、緊張の連続だ。 「大学を卒業したら、うちに勤めますか?」 「それもいいですね」 「植物に詳しい人間が欲しいんだ」 「両親と相談してみます」 森川先輩の両親はすでに亡くなっている。 「では、また、来週、県立美術館と図書館の樹木を見に行きます」 「いつでも観察してくれ」  私達は丁寧に挨拶をすると、桜井造園を後にした。桜井造園から少し離れたところで、森川先輩が携帯を出した。 「もしもし、森川です。先程お願いした件は?」 「はい、社宅に住んでいるのは、6人」 「その中で1人暮らしは3人」 「風見、渡辺、佐川ですね。ちょっと待ってて下さい」 森川先輩は、カメラを覗く。 「風見と佐川が担当していますね。一週間ぐらいで引っ越してきた人は?」 「そうですか、わかりました。終わったら連絡します」 森川先輩は携帯を切る。 「誰?」 「大木展子先生」 「どうして?」 「彼女の家は大木財閥と言って、この福島じゃ1位2位を争う程のすごい家さ。福島の裏も知っている。桜井造園も大木財閥の傘下。桜井造園の職員構成を聞いてもらったのさ。1人暮らしの人、社宅に住んでいる人。そして最近引越た人」 「それが?」 「あの白骨死体を埋めた人間は、あそこが造園中に埋めた。日中に造園して掘り返しやすくし、夜、埋めた。普通にその辺りには捨てられなかったのだろう。毛布の包み方も丁寧だ。身内かもしれない。しかし、何かあってその白骨死体を身近におけなくなった。それで、少しの間、あの場所に埋めた。あの埋め方じゃ、雨風で土がはげ、そのうち犬に荒らされてしまうのは確実。ずっと埋めておくならもっと深く掘ったはず。犯人にはそれが出来たが、やらなかった。という事は、また掘り返したいと思っている」 「掘り返す?」 「そう。だから最近、引っ越した人間を捜してもらっている。社宅だと引越の時、白骨死体を持ち込むのは難しい。一軒家なら、何も埋めなくても、そのまま持って行ける可能性が多いからね」 すると、森川先輩の携帯が鳴った。 「吉田繁警部補だ」 携帯の表示を見る。 「はい、森川です。ありがとうございます。70代女性ですね。死因は心臓の血液不順。つまり心筋梗塞。病死ですか・・・。死後、3年というところですか。わかりました。ありがとうございます。後ほど、連絡します」 だいたい話は分かった。 「それで、県立美術館と図書館の造園再会は明後日です。あの白骨死体を掘り返すなら、今日の夜か明日の夜。しかし、今日の夜、桜井造園は、会津若松で泊まりの仕事が入っている。社宅に住んでいる独身で一人住まいの風見さん、渡辺さん、佐川さんは本日から会津若松に行っている」 「という事は、明日の夜に掘り返す?」 「大事な遺体なら・・・。で、今、彼らの周囲の人間を調査してもらっている」 「大木展子先生にですか?」 「大木展子先生ではなく、彼女のお父さんの財団に」 福島駅前まで歩いてきた。 「電車の時間だね」 森川先輩は手を振って歩き始めた。 「明日の夜、ご一緒します」 森川先輩は手で丸の印を出した。  その夜は5月なのに、少し冷え込んだ。森川先輩の横には福島警察署の吉田繁警部補が待機している。 「本当に来ますか?」 吉田繁警部補は不安げだ。 「たぶん、大丈夫だと思います。彼の両親は、小学生の頃、交通事故死しています。そしてその時から祖母の静子さんに20年間、育てられています。しかし、ここ3年間、静子さんの姿を見た人間はいない。そして、彼と静子さんが住んでいた一軒家は、一週間前に福島市道路拡張工事により、取り壊されています。畑の中の一軒家なので、周囲に異臭は漏れなかった」 「自宅で祖母が亡くなって、そのまま放置していたと」 「でも、記録では、年金は最近まで口座に振り込まれています。祖母が愛おしくて遺体の始末が出来なかったのか、年金が欲しくてそのままにしていたのか・・・。でも、あの遺体の毛布の包み方を見ると、愛情が見られます。ですから、前者かなと・・・」 「でも、犯罪ですからね・・・」 「もし、年金ほしさなら、遺体を掘り返す事の出来る場所には置きません。彼の職業上、遺体が見つからない場所は沢山ありますからね」 すると、吉田繁警部補の携帯が震えた。 「どうした?」 「そうか、まだ動くな」 携帯をおく。 「車が一台、来たそうです」 現場に緊張が走る。  私達の目でも、誰かが林の中で動いているのが確認された。 「まだです」 森川先輩が囁く。 「毛布に人形を巻いて、埋めておきました」 「その毛布を掘り出した時です。私達は邪魔しないように帰ります」 時間がとても長く感じた。夜の美術館は少し怖い。 「今ですね」 森川先輩が囁くと、吉田繁警部補が叫ぶ。 「確保だ」 周囲に隠れていた警官が林の中に走り込む。森川先輩はゆっくり歩き出す。 「佐川訓夫、死体遺棄の容疑で逮捕する」 私達の後ろで吉田繁警部補の声がする。私達は、少し離れた場所に停めた森川先輩の車に乗り込む。 「春美さん、冷えただろう」 森川先輩はいつも優しい。それだけで誤解される。  翌日、5月27日、木曜日。新聞の片隅に死体遺棄の記事が載っていた。森川先輩の推理した通りだった。付け加えるとしたら、佐川訓夫は、とても祖母を愛していて、毛布を掘り起こした時、その毛布に顔をすりつけていたと、吉田繁警部補から聞いた。 「祖母の遺体を火葬するなんて、彼にとってはとてもむごい事だったらしい」 この世の中には色々な人がいると、森川先輩は話していた。 ☆ 「で、結局、その小笠原先生っていう人、先崎さんに告白したんですか?」 井上くんが尋ねてくる。 「大人の事情で、それ以降、何もなかったわ」 「大人の事情って、何ですか?」 「それは、次回ね」 私は誤魔化した。 「何か、大人って難しいですね」 「井上くんも、大人になるとわかるわよ」 「俺はもう28歳の大人です」 すると、目の前にあるアパートの入口から男女のカップルが出てきた。 「あら、あの女の人、先日の週刊誌の記者じゃない」 井上くんは車をゆっくり発進させた。
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