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生徒会長もとい中島先輩と私の恋がどうなったか、知りたいですか?
でもそんな、十年前のことを聞かれても、恥ずかしくって答えたくありません。
今でも夏の終わりには苦い思い出と甘い思い出がミルフィーユのようによみがえる。
憂鬱になっている私に気遣った旦那が、ほほ笑みながら声を掛けてきた。
「美智子。今日は何食べたい?」
私はふと、商店街のコロッケが久しぶりに食べたくなった。今は値上がりして百円になっている。けれど、そのコロッケを今、無性に食べたくなってしまった。
「コロッケ! 商店街の肉屋の、コロッケが食べたいな」
「いいよ、一緒に食べよう」
私たちは〈中島〉のネームプレートを背に、商店街へ向かって歩き出した。
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