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「既読無視……いや、ブロックされたかな」
私は何度もスマートフォンの画面を点けては新しいメッセージがないか確認した。でも、来ない。彼氏――いや、元カレからは〈ごめん〉や〈さよなら〉のひと言もなかった。
「ありゃ、公園まで来ちゃった」
手持ち無沙汰の私は、昼前の無人の自宅を出て、目の前の商店街をぼーっと歩いていた。そして気づいたら商店街の先の憩いの広場という、小さな公園に出てきてしまっていた。まだ残暑の残る夏休み最終日。アーケードで涼しい商店街に引き返そうとしたとき、見知った顔が目に入った。元カレの友人グループだった。公園にたむろしている。
(そう言えば夏休み中、一緒に何度か遊んだな)
私は元カレの様子を知りたくて、そのグループに近づいた。すると「美智子のことだけど」と突然私の名前が聞こえてきた。思わず木陰に隠れて耳をすませながら息を潜めてしまった。これじゃあ盗み聞きだ、良くないのに――と思いつつ、息を止めるほど耳をそばだてた。
「アイツ、ちゃんとフッたらしいよ」
「ちゃんとフるって、なにそれ」
男子三人、女子二人のグループ。そこに元カレと私が中に入って何度か夏休み中遊んだものだった。
正直、元カレがいたから一緒にいたグループのメンバーであって、あまり好まない人たちだったけれど、まさか――。
「でもさ、アイツもよく一か月もったよな」
「罰ゲームだもん。罰ゲームの罰ゲームまで用意されていたら、さすがに一か月ぐらいはね。たとえ相手が地味な女子代表の美智子でも、付き合うって。さすがに」
「美智子、顔は悪くないもんな。メガネだし黒髪ロングで超地味だけど」
「そうそう。ま、これも二人のひと夏の経験ってことで」
あはは……五人の下品なぐらい大きな笑い声を背に、私はそっと公園を離れた。
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