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翌日の登校早々、クラス内ではちょっとしたざわめきがあった。
「あれ、美智子なの?」
「ウソだろ? 別人じゃん」
そりゃそうだ。今朝、出かける前のお母さんでさえ「あんた、本当に美智子?」と疑うぐらいだった。
明るい茶髪に、メンズもビックリなほどショートカットしている。うしろから見れば刈り上げている。おかげで首元が少し心もとなく涼しい。そしてトレードマークとまで言われた黒縁メガネも外して、コンタクトをしていた。
(元カレをおどろかせたくて、コンタクトをこっそり買ってつける練習してたんだよね……)
そんなことを苦々しく思いだしながらも、私は笑顔を貼りつけてクラスメートに「おはよう!」と声を掛けた。〈顔だけは悪くない〉と言われた私だからこそ、イメチェンしたらちょっとした話題になれるらしい。
クラスメートの女子たちが一斉に群がって「かわいいね!」「どこで切ったの?」と立て続けに尋ねてくる。それを遠巻きに昨日の五人組が困惑した様子でうかがっているのが視界のすみに見えた。
「おはよ……って、あれ、だれ? え、ミチ?」
元カレも登校してきた模様。クラスに入った早々、私の方を見て目を丸くしている。
「ウソだろ? メガネは?」
私はにっこりしながらもほかのクラスメートの質問攻めに丁寧に答えていった。
ただし、ウソも混ぜながら。
「彼氏できたの?」
「まさか。そんなのいないよ」
「じゃあなんで髪切ったの?」
「イメチェン」
私のことを穴が開くほど見ている元カレがおかしくて、お腹を抱えて笑いだしたい衝動を抑えるので必死だった。
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