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「宙くん」
彼が私に目を向ける。驚きを交え、やや落胆したようにも見えた。
「雨降りそうやで。誰かと待ち合わせ？」
言うと、宙くんは寂しそうに笑んだ。
「麻美先輩は？ 買い物ですか？」
私は手に持つレジ袋を持ち上げて見せた。
「急にチョコ食べたくなってん。どうせならイイ店で買うたろ思うて、足を伸ばしてきたんや」
柄になく嘘をついた。このチョコは美沙へのプレゼント。今日、有名なショコラティエがこの街に二号店をオープンした。先着百名で抽選を行い、うち十名だけが買える品。私はこの手の運はある。強く強く祈れば運は向いてくる。運は平等とか、強運があるとかないとか、色んなこと言う人がおるけど、運ってやつはめっちゃ損得勘定あんねん。こっちから強烈な思念や相応の対価を差し出さないと、運は相手してくれへん。
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