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マミの半生
マミはシングルマザーのネイリスト、29才。
158cmの49kg、これ以上は体重を
絶対、増やしたくありません。
最近ハマっているのは、チョコミントアイス。
「スースーするので、カロリーオフ」と
言いたいです。
人気芸人サンドウィッチマンのお馴染の
あのギャグ、好きです。
土木設計事務所で見習いをしていた元夫のユウジは、サトルを妊娠して29週目に入った頃、
高層タワーマンション建設現場での転落事故で、
打ちどころが悪く、呆気なく、
亡くなってしまったのでした。
故ユウジはけっこう、そそっかしいタイプでした。
付き合っていた頃、
ファミレスで、マスタードの容器を力任せに
プッシュした折、キャップが外れ、唐突に
中身が爆発し、辛子色がそこら中に
飛び散るという大惨事に。
着用していた白いシャツのクリーニング代を
巡って、店長を呼びつけたことがあります。
水溜りとも、相性が悪かったです。
何処を見て歩いているんだ?と、ツッコミ入れ
たくなるほど、すってんころりんと
絵に描いたように、転びがちでした。
ボーリングのフォームは、オーバー過ぎて
見ているマミのほうが恥ずかしくなったものです。
敢えて言うほどでもないのでしょうが、
カテゴリー的には、出来ちゃった婚になります。
最近、授かり婚って言う人、増えましたけど。
妊娠の事実を母親に打ち明ける時、
ここはやっぱり叱られるよねと、マミもそこそこ
緊張したのですが、普段は底無しにお喋りな母
ですのに、マミの話が、
「‥‥ママ、実はね」と核心に触れるや否や、
目を見開き、黙って話を聞き、なんとハグして
くれたのです。
身体を離すと、ちょっと涙目になり、
「‥‥マミ、産みなさい」と、言ってくれました。
フッと微笑んだ後で、遠い目になり、
「今のコはいいわね」と呟きました。
想定外な展開に、
きっと母にも、父には言えない過去があるのだと、
マミは勘づきましたが、それはもう遠い、
過去の話として母的に処理されているはずです。
引き摺っていたら、もっと違うタイプになって
いることでしょう。
匂わせ的に、
「このコ、男の子のような気がする」とも、
母は言いました。
父は日頃から母の言いなりで、
殆ど、家庭では意見が通らないタイプです。
母経由で、事態を把握した後は、
諦めにも似た優しさでマミを包んでくれました。
幼馴染で親友のユミも言うのですが、
道徳にしがみついた、しみったれた頑固親父ほど、
需要の無いキャラなんて、この世にあるの
でしょうか。
ユミのパパは、人生半ばにして開眼、
いわゆるLGBT的カテゴリーのいずれかに
属していると思われます。
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