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両親は比較的、安易に攻略できたわけですが、
その後も一悶着は待っていました。
肝心の、お腹の子の父に当たる彼氏のユウジが、
一時的に姿を眩ましたのです。
「まだ心の準備が出来ていなかったんだ」そうで、
その言葉を生涯、マミは忘れることはないでしょう。
友達の友達の友達まで連絡網を取り寄せ、
協力を仰ぎ、SNSでも拡散しました。
指名手配なんて、全然簡単簡単。
まぁ有り体に述べますと、ユウジは、実家が
木曽の山中にあるのをいいことに、帰省していた
だけだったのですが、ぜってぇほとぼりを冷ますと
いう魂胆があったはずです。
「冷ましたところで、お腹の子は育つもんなんだ、
ユウジ」
今ならマミも、言ってやれます。
マミが、「‥‥ユウジ、実はね」と切り出した時、
ハナから無い落ち着きを更に無くし、
とんでもアクシデントを起こしました。
一応、「分かった」と言ったものの、今思えば、
それは理解しているというよりも、
「聞くことは聞いた」という程度だったのでしょう。
ちょっと馬鹿っぽいところがあるのは、
前から分かっていましたが、
私もそれなりだしという、ユルい分別で許していた
マミも、馬鹿っぽい女子の一人だったのですね。
人里離れたアウトレットモールの空きに空いた、
広い駐車場で、急にエンジンをかけたかと
思うと、次に前進せずに後退したのです。
つまり、ギアをバックに入れるという、まるで
TVニュースで時々見かける、ご老人のような
発車ミスをしでかしたのです。
マミを乗せたまま、逃げようとしたのは明白です。
車止めに乗り上げて、後ろにあった金網のフェンス
にゴリゴリと車体を擦りつけました。
ますますパニクるユウジに、
「ちょっとぉアクセル踏んじゃダメだよ」と、
マミは冷静に、注意しました。
遅まきに、彼は事態を把握しました。
当然、ユウジご自慢の車は、可哀想にお尻部分を
怪我しました、
そのまた後ろは小川だったのですが、
落ちずに済んだのは、まあ不幸中の幸いでしたが。
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