第3話「語り部の末裔」

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第3話「語り部の末裔」

「ミランダ。何で、デリーズに襲われていたのか。良かったら教えてくれないか?」 ソラがたき火の番をしながら、ミランダにデリーズに襲われていた訳を聞いた。 「そうね。ソラなら話しても、良いかな」 ミランダは、ソラに自分の身の上話を話し出した。 「私は、奇跡の宝石の語り部の末裔なの。」 「奇跡の宝石って?」 「私は、母から宝石の名前を“フェアリー・ハート”って、聞いてたわ。でも、それだけよ」 「ミランダの家族は、どうしてるんだ?きっと、心配してるぞ」 「私の家族は……」ミランダは、それ以上言えず口をつぐんでしまった。 「ごめん。言えないならいいよ」 今度は、ミランダがソラに聞いた。 「ソラの腰に下げているそれは。銃よね?ソラは、ガンマンなの?」 「これは、父さんの形見の銃なんだ。僕は父さんの銃と職を継いだだけで、銃は得意じゃない。母さんも、三年前に病気で亡くなったんだ。」 ソラは、そう言うとうつむいた。 「ごめんね。私こそ、辛いことを思い出させてしまって……」 「ああ、僕は大丈夫。アリスがいるから。さあ、もう寝な。僕が火を見てるから」 「ええ、ありがとう。おやすみなさい」 ミランダはそう言うと、胸の中にもやもやした物を残したまま眠りについた。 ◇ ◇ ◇ ―――そして、夜も明けて。 太陽が昇ってもまだ、帰って来ていないアリスを心配したソラが。 「アリスがまだ、帰って来てない!どこ行ったんだ。あいつ……」 ソラは心配から、ソワソワと落ち着かず立ったり座ったりを繰り返していて。 苛立ちを隠せないようだった。 「確かに一晩も帰って来ないのは、心配ね。交番に行って見ましょうか?」 ミランダが心配して言うが、ソラは首を横に振った。 「AIは物扱いだ。警察が動くはずがない。僕が探す」 ソラとミランダは、手分けしてオアシスの周りや森の中を探した。 オアシスの周りの森は、範囲が狭い。きっと、見つかるはずと踏んだが。 一時間以上探しても、アリスは見つからなかった。 「まさか、あいつ……町に帰ろうとして、砂漠のデザートゲイターに 食われたんじゃないだろうな!?」 ソラが真っ青になり、あたふたし始めると。どこからか、ボーガンの矢が飛んできて木に刺さった。そ れには、手紙が結ばれてあった。 「何これ……」 ミランダは手紙を開いて読んで聞かせた。 「貴様のAIは預かった。返して欲しければ、町の外れの俺のアジトまで、ミランダを連れて来い。砂賊団賊長デリーズ」 「大変アリスが !」 「くそっ!デリーズめ」 ソラは怒りの表情を浮かべ、急いでデリーズのアジトに向かった。 一方のアリスは、デリーズに囚われて鳥かごの中に入れられていた。 「この小悪党!さっさとここから、出しなさいよっ!」 「小うるさいガラクタの小娘だ。小僧が、ミランダを連れてくれば貴様など。いらんわ」 「ホント、ホント!うるさいAIですね。デリーズ賊長」 「ねえ、聞かせて……あんたは、何でミランダが必要なの?」 「へへ……賊長がお前の質問なんか。聞くか~!」 「まあ、待て。どうせ皆、血祭りにあげるのだ。冥途の土産に聞かせてやる。」 「俺は慈悲深い男だからなあ。そうだろう?マイキー」 にやりと笑う。 「その通り、賊長は男前~」 ここぞとばかりに、デリーズをよいしょするマイキー。 「いいから教えなさいよ!」 「良いだろう。教えてやる」 「貴様は、“フェアリー・ハート”という物を知っているか?」 「フェアリー・ハート?」 アリスは、自身を製造した博士から、一度聞いた事があった。 何でも、願い事が叶う物があると。 もちろん、現実的なAIの彼女は、そんな物の事は信じていなかったが…… デリーズは、アリスにフェアリー・ハートの事を話して聞かせた。 何でも願いが叶う物。しかし、それの正体は謎に包まれていて。デリーズによると、ミランダの一族が、それの手に入れ方を知っていると言う。 「ああ~……そういうこと?だから、あの子を欲しいんだ。でも、無駄よ。あの子はソラが守ってるもの」 「それで、貴様が必要なのだよ。貴様はあの小僧の弱点だ。銃は下手だが、あいつは格闘が強いからな」 「まさか?ソラは、アタシのことなんて……」 自嘲的に笑うアリス。だが、にやりと笑いデリーズは言う。 「では、試してみるか?貴様を人質にあの小僧をなぶり殺した後、ミランダを手に入れる。話させた後は、口封じに小娘も殺すがな!」 アリスは、デリーズの卑劣な企みに虫唾(むしず)が走り、カッと頭にエネルギーが上った。 「ふざけないで!誰がお前なんかにソラが、黙って殺されるか!アタシがさせないっ!!」 「おい、やれ」 「分かりやした。」 デリーズがマイキーに命じると、アリスにアンドロイド用のクロロホルムをかがせた。 「う……!」 アリスはそのまま、深い眠りに落ちた。
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