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1石田村の歳さん
ここ、試衛館。
ここは、実践道場である、天然理心流を教授する道場である。
ある日のこと。
門の前に、大柄な人の良さげで無邪気な男が木刀を振っていた。
その男に話しかけた男が一人。
「おい、総司、道場破りだ。」
「また、練兵館のやつ呼ばないといけないんですか。嫌だな。」
「いいから行って来い。」
「はいはい。」
総司が行ってしまうと、涼し気な色男、土方歳三は、中に戻っていく。
しばらくすると総司が背の高い男を連れてきた。
「ひっじかったさーん!連れてきました!」
「おう、あれ、今日はいつもの人じゃねえんだな。」
「はい、今日は私がかわりに。桂小五郎と申します。」
「ああ、わりいないつも。」
「いえ。」
道場破りは、むさ苦しい乞食のような男だった。
「お前さんか、相手は。ヒョロっちい男だな、いや女か?女を用意されるなんて俺も舐められたもんだ。」
道場主、近藤勇は冷や汗をかく。せっかく練兵館から来てもらったのに。
「歳さん、今回は人が違うみたいだな。」
「桂小五郎、というらしい。」
小五郎は背筋を伸ばして構えた。
腕に覚えがある土方や近藤は只者ではないとわかった。
「よく言われます。しかし・・・、私も男ですから。いい気はしないものですよ。」
合図があった途端、桂が動く。
神道無念流特有の力で押していく力強さ、それでいて美しいさばきは、試衛館門弟と食客たちを唖然とさせた。
手も足も出ない道場破りは、吹き飛ばされた。が、すぐに起き上がると門へ逃げていった。
門弟たちは固まって動かなかった。
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