夏の海は私たちをつなぐ

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 バス停から車で五分程、歩いても二十分とかからない祖父母の家に着いた頃には、とっくに午後を回っていた。    小ぶりながらも、きちんと整えられた松。色とりどりのパンジー。ずらりと並ぶ小さなサボテンたち。おじいちゃんの面影がある、優しい雰囲気のタヌキの石像。一見、バラバラなものたちが自然に調和している。  玄関までの飛び石を歩く途中に見えた白い小屋。おばあちゃんが、地元の子どもたちにそろばんを教えているらしい。  「お邪魔します。」  小さな声でつぶやく。同時に、鼻をくすぐる懐かしいにおい。本当に久しぶりだ。この家に来るのは。そして、この地に足を着けているのは。  「海織、しばらくみないうちに、こんなに大きくなって。子どもはすぐに大きくなるからね。それに比べて年寄りは・・・・・・。ああ、部屋は母さんが使っていたところ、好きにしていいからね。東京の家にいるとき以上に、何でも言うんだよ。」  おばあちゃんの微笑みに、小さくうなずいた。
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