夏の海は私たちをつなぐ

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 夕方。家の玄関の前で、迎え火をする。本来とは違う方法なのかもしれない。ススキを地面に山の形に置いて、火をつける。静かに光をあげて、燃えていく。ゆらゆらと揺れる炎は私の心を表しているように見えた。  私は何を迷っているのだろう。家族のこと。家族のことで何を迷う必要があるのだろう。必要最低限のことは、親とも話せているはずだ。だから、迷うことなんて何もない、はずなのに。    お盆も最終日となった夕方。東京の家から電話がかかってきた。  「海織、代わってほしいって。」  数分の間、話していたおばあちゃんが、私に受話器を渡してくる。ゆっくりと受話器を耳に近づける。  「久しぶり、海織。広海ね、手術終わって、もうじき退院できるみたいだから。あと一週間くらいで迎えに行くね。」  久しぶりに聞く母の声は、私の鼓膜をひどくゆっくり揺らした。  「そう。」 としか言えなかった。  ひどく怠慢な動きで受話器を戻す私を、私が見ていた。
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