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桟橋をゆっくり歩む。温かい風が肌を撫でていく。髪を揺らす。潮の香りが濃い。海を懐かしいと思うのは、海が故郷だからだ。
お母さんは、海に臨むこの町で育った。
海織という名前。海を織りなすという意を持つこの名前は、この町のこの桟橋で、お父さんとお母さんが考えてくれたのだと昔聞いた。
広海も同じだ。太平洋の広い海が穏やかに広がっていく様子をなぞって、つけられたという。同じ、この場所の情景を見て考えられた。
一人だけの大切な妹。広海は元気かな。胸がざわざわする。
桟橋のいちばん橋の方まで歩み続ける。夕方の海。波は穏やかだ。空の色がすべて海に映る。私の知っている色では、形容できないほどの数多の色が、調和をなしている。きれいな夕焼けを創造している。
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