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母『そこに座って。』
亙『うん。』
母『今日はとーっても大事な話。今だから、話すの。落ち着いて聞いてね。』
亙『え、うん。分かった。』
母『亙さ、本当に苦しい気持ちになったとき、変な現象でも起こらなかった?』
亙『んー、あ、イジメが始まった瞬間に雨が降ったり、道端で殴られそうになった瞬間にたまたま筋肉隆々の黒人さんが現れて助けてくれたり、とかかな。』
母『そのとき、自分の体に変化は?』
亙『そりゃ、危機から救われたっていう変化はあるよ。』
母『そうじゃなくて、生理的な変化よ。』
亙『あー、うろ覚えだけど、体の中で血がいろんな方向に流れて、なにがしかの気が溜まってくる感じはした。でも緊張したら皆そうなるんじゃないの?』
母『そうじゃないわよ。』
亙『私が特別だって?』
母『とっても。』
しばらく沈黙が流れ、母が静寂を切り裂いた。
母『嘘みたいだと思うかもしれないけど、貴方は人間じゃないの。』
亙『は?』
母『だって、生活サイクルも変な現象も思考法もホモ・サピエンスとは違うじゃない。』
亙『意味わかんないよ、私がヴァンパイアだとか闇の魔法使いだとか言いたいの?』
母『闇の魔法使いに近いかも。あなたの父親もそうだった。レスターギュという種族なの。』
亙『れ、れすたーぎゅ?なにそれ。』
母『特殊な生物で、母親の姿に応じて子供の姿が決まるの。母さんはホモ・サピエンスだから貴方の"標準的な"姿はホモ・サピエンスよ。』
亙『標準的な?』
母『訓練で自分の姿を変えられる。だからといって、変な戦争に巻き込まれたりは恐らくしないから安心して。』
亙『恐らくってなんだよ... 』
母『驚かせたわね。エイプリルフールだからね。』
亙『... は?全部嘘?』
母『うん、エイプリルフールだから。』
亙『度が過ぎます。』
母『ごめんね。エイプリルフールだから此くらいじゃないと面白くないかなって思って。』
亙『ええ、面白いというより放心状態です。もう部屋に行って、数学やりますよ。』
母『また数学?四六時中やってるしさ、もう変人じゃん。』
亙『変人なのはそうだけどレスターギュとか変なこと言わないでよ。本気にしちゃったじゃん。』
母『ごめんね。以後気を付ける。』
亙『うん、今日の晩御飯は?』
母『アジフライ。』
エイプリルフールの衝撃が体から抜けないまま晩御飯を食べる。でも、晩御飯は美味しく食べたいので、一回切り替えよう。母さんだって悪気があったわけじゃないだろうしね。さて、今日はアジフライ。これはジューシーでとっても美味しい。家で揚げると違うなぁ。そのとき、インターホンが鳴った。モニターを見ると同級生の鳴海沙也加(ナルミサヤカ)だった。
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