プロローグ

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 署からバスで十五分ほどのところに引っ越してきて正解だった。以前は実家の近くのマンションに一人暮らししていたが、そこからだとここまで通勤に四十分ほど掛かる上に乗り換えもあり、思いきってこの地域に引っ越してきたのだ。  通勤通学のピークは過ぎても、車内はまだまだ混み合っている。たまたま目の前の席に座っていた学生が降りていき、周りを見渡してもお年寄りや体の不自由な人の姿もなかったので、座らせてもらうことにした。  座ってすぐに、急激な睡魔に襲われた。心のどこかには、乗り過ごさないように寝てはダメだとわかっているのだが、疲労と睡魔が一気に襲う。  ほんの数分深い眠りに落ちていた時だった。  突然『ドンッ』と強い衝撃を身体に感じたのだ。 「きゃー」「助けてー」  衝撃と共に悲鳴が辺りに響き渡り、一気に眠りから現実に引き戻される。 「何??」  立って乗っていた乗客たちが重なりあって転倒し、大勢のけが人が出ていると一瞬で分かる状況だ。そして驚くことに、このバスはなんと前のバスに追突して止まっているようだ。  座席に座っていた私は、幸いにも無傷ですんだ。
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