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「最近沙耶香は本社にいないから分からないかもしれないんだけど、沙耶香のおかしな噂が広まってて。現場に出たのをいいことに仕事サボってるって。しかもそこの店長代理の人とあやしい関係だとも。沙耶香のこと信じてないわけじゃないけど、一応確認したくて」
知らないうちにそんなくだらないデマが流されていたなんて。というかそんな噂流すのは西岡さんくらいのものだ。もしかしたら今日のあの事件の腹いせにそんな嫌がらせをしたんだろうか。それかもっと前から噂が流されていたとしたら報告書、海花さんの件。どちらにせよ怒りを通り越して呆れるしか無い。
「その噂に関しては何一つ合ってる部分はないよ。慣れない作業でミスはしたこともあるけどサボってなんかないし、たくさんフォローはしてもらってるけどあやしい関係になんてなってない。
ちなみに誰がそんな噂流したかも大体分かる。その人、今日私のいる喫茶店に来て大暴れしたから。井上課長も一緒にいたから、きちんと説明もしてるしそんなの嘘だって分かってると思う。そのうち報告書もあがってくると思うから、井上課長に確認してみて」
私の言葉に淳さんは驚きつつも安心した表情でビールを飲んだ。
「そうだよな。沙耶香に限ってそんなことはないと思ったんだけど。それにしても大暴れって何したんだ?」
「あまりにもくだらなくて話したくもない。報告書読めば分かると思うからそっちで確認して。それより、私も社内の噂1つ聞いたんだよね。淳さんが最近会社帰りに女の人とよく一緒にいるって。もちろん私じゃない人ね」
淳さんは私の方は見ずに餃子を一口噛った。咀嚼してゆっくり飲み込んでからこちらを見る。
「ごめん、何の話かよく分からない。それも沙耶香に対して流された嘘の噂と同じ類のものなんじゃないのか」
なるほど、そうくるか。私はスマートフォンのフォルダから1枚の写真を表示した。
「今日、古坂晴香さんっていう人が私に会いに来た。どういう話かは言わなくても分かるよね」
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