01. 驚きの提案

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 ため息をつく林田さんの表情は真剣そのものだった。 「いくら偽装とはいえ、籍を入れない訳にはいかないと思う。むこうも諦めるためにはしっかりと調べるだろうし。だけど、必要がなくなったらすぐにでも籍は抜くよ。戸籍にバツが付いちゃう事になるけど、どうだろうか」  なるほど、まあ、漫画で見る契約結婚ものの話によくある話だなと思った。だけど、分からないことが1つ。 「私と林田さんが結婚することで、私にメリットがあるようにするって言ってましたけどそれって何なんですか?」 「俺は元々管理部の飯島さんに対するイジメを問題にあげてたんだけど、部長から他部署にむやみに口出しするなって怒られてた。だけど、それが身内ともなれば話は別だ。飯島さんが周りの人たちにこき使われないよう、管理部の体制を整える提案をする。どんな事をしてでも飯島さんの職場環境を改善するよ。どうかな?」  なるほど。それは悪くない提案なのかもしれない。林田さんは社内でも行動力と成果に定評のある人だ。その人が自分のために動いてくれるとなるとこんなに心強いことはない。と言うか、他部署のことをそこまで気にかけていたなんて思ってもいなかった。  でも……そんなことで簡単に決めてしまって良いものか。それに結婚ってそんな簡単なものではないはず。 「あの……ですね、次に気になっているのは、ご家族なんです。ご両親やお兄さんたちまで騙すことになると思うんですけど、それは良いんですか? 私には両親もきょうだいもいないので問題はないんですが」
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